医学会誌44-補遺号[S30]
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平成30年度川崎医学会賞 研究奨励賞:組織培養・免疫系分野 分子血管・血圧制御学 十川 裕史受賞対象論文:Infiltration of M1, but not M2,macrophages is impaired after unilateral ureter obstruction in Nrf2-deficient miceYuji Sogawa, Hajime Nagasu, Shigeki Iwase, Chieko Ihoriya, Seiji Itano, Atsushi Uchida, Kengo Kidokoro, Shun’ichiro Taniguchi, Masafumi Takahashi, Minoru Satoh, Tamaki Sasaki, Takafumi Suzuki, Masayuki Yamamoto, Tiffany Horng & Naoki KashiharaScientific Reports 18・7(1)・2017演題名:転写因子Nrf2が腎尿細管間質の慢性炎症に与える影響【背景と目的】 腎疾患進展共通経路として慢性炎症が知られているが、その本体は未だ不明である。近年、インフラマソーム活性化が慢性炎症を形成し、腎疾患進を進展させることが注目されている。インフラマソームは自然免疫を担う機構の一つであり、種々の刺激により活性化される。我々は細胞内の活性酸素種の蓄積がインフラマソームを活性化させ、腎疾患を進展させることを報告したが、抑制機構は分かっていない。 転写因子Nrf2は抗酸化遺伝子発現を調節することで抗酸化作用を発揮し、炎症を制御する。一方で、インフラマソーム活性化を起こすという相反する報告があり、病態形成におけるNrf2とインフラマソーム活性化の詳細な関係は不明である。今回、Nrf2がインフラマソーム活性化および腎疾患進展に与える役割を検討した。【方法と結果】 野生型マウス(WT)及びNrf2遺伝子欠損マウス(Nrf2KO)を使用し、腎内炎症線維化のモデルとして一側尿管結紮術(UUO)を行った。コントロールとして偽手術(Sham)群を作り、WT-Sham、WT-UUO、Nrf2KO-Sham、Nrf2KO-UUOの4群で比較した。結果はWT-Sham群と比較してWT-UUO群はUUO後7日目をピークにインフラマソーム活性を認めた。一方で、Nrf2KO-UUO群ではWT-UUO群と比較してインフラマソーム活性が抑制され、尿細管間質に浸潤するマクロファージが抑制された。抗炎症性マクロファージ(M2)浸潤は影響を受けなかったが、炎症性マクロファージ(M1)浸潤が7日目以降に有意に抑制された。 次にマクロファージにおけるNrf2作用を検討するためにWT、Nrf2KOをドナーとして、WTに骨髄移植した。骨髄移植後にUUOを施した。Nrf2KO由来の骨髄移植群はUUOにおける尿細管間質障害が軽減された。更にIn vitroでWTとNrf2KOの骨髄由来マクロファージ(BMDM)を初代培養しNLRP3インフラマソーム活性刺激(LPS+ATP)を行った。LPS+ATP刺激後のインフラマソーム活性化はWT-BMDMに比較しNrf2KO-BMDMで有意に抑制された。 最後に治療意義を検討の為UUO後期(7日目)からCaspase1阻害薬を投与した。結果、M1浸潤及び尿細管間質の障害が有意に抑制された。【結論】 マクロファージにおけるNrf2欠損状態はインフラマソーム活性を軽減し、尿細管間質へのM1浸潤を抑制する事が分かった。これによりインフラマソーム活性化制御におけるNrf2の役割が解明された。S86川 崎 医 学 会 誌
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