医学会誌44-補遺号[S30]
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研究課題名:心臓を描き、伝える~イラストレーション手法の探求~研究発表者:川野 敬亮(平成29年度医学研究への扉)【はじめに】メディカルイラストレーション(MI)は、医学や医療における情報を視覚伝達するメディアで、文字だけでは表現困難な医学・医療情報をビジュアル化し、患者や医療関係者に正確に伝えることを目的としている。今回、MIの実際と医学医療への貢献について体験する目的で、作品制作に取り組んだ。【方法】鉛筆によるスケッチ、2DCG、3DCGの技術を学び、心臓を主たるテーマとしてMIの制作を行った。鉛筆を使ったタッチの差による表現、2D・3DCGのソフトウェアの基本的な操作を習得し、3Dプリンターによる出力も行った。 【結果(作品)】骨と心臓のスケッチによる硬質表現と軟質表現、2DCGによるスケッチの着彩、2DCGのレイヤーによる心臓の内部表現、シェーマによる心臓の部位別の色分けと右冠動脈の走行の説明、3DCGと3Dプリンターによる大動脈弓と気管支の位置関係の表現を制作した。【考察】MIを含む画像では医学的に正確な情報を伝達することが最重要だが、例え正確であってもビジュアルに情報量が多いと情報の受け手は混乱してしまう。そのため、伝えたい情報に焦点を絞り、目的に合った方法で情報を提供する工夫が求められる。情報ビジュアル化の方法には、写実的な鉛筆画やシェーマ、3Dモデルなどがある。質の高いMIは、幅広い表現方法を複数備え、状況に応じてそれらを選択して表現しなければならないものと思われる。研究課題名:若い女性は要注意!甲状腺機能亢進「バセドウ病」とは研究発表者:吉田 好花(平成29年度医学研究への扉)【はじめに】甲状腺機能障害は若年女性に多いという点に興味を持ったため、特にバセドウ病に焦点を当て、一般市民向けのパネルと展示物の制作を行った。【方法】図書館、インターネットでの文献検索による疾患の資料の収集、甲状腺模型制作・顕微鏡写真撮影などを行った。【制作物の概要】パネル展示として、バセドウ病の疾患概念、原因、疫学、特徴的症状について解説した。また、正常甲状腺とバセドウ病による甲状腺腫大について容易に理解してもらうために正常と疾患両者の模型(気管を含む)を制作した。材料は紙粘土、ホース、やすり、アクリル絵の具、ニス、アクリル板、を用いた。さらに、病理実習で使われているプレパラートから顕微鏡写真を撮影し、組織学的にも対比できるようにした。【考察】対象疾患について調査しまとめる学習方法に加え、今回は対象者にもわかりやすいプレゼンテーションを心がけた。重要なポイントを強調することや、医学的に正確で精巧な模型を製作することの大切さと大変さを学ぶことができた。特に肉眼模型は手本となる正常あるいは腫大甲状腺の標本や模型が乏しく、イラストや写真などを参考に立体的なイメージを作るなどの工夫が必要であった。興味のあった分野について深く学ぶことができ、より医学への興味が高まった。― 医学研究への扉 ―S82川 崎 医 学 会 誌

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