医学会誌44-補遺号[S30]
82/94

研究課題名: 一般用医薬品添付文書の理解度改善を目指し開発したピクトグラムの効果研究代表者:山下 純(福山大学 薬学部薬学科) 薬局利用者による一般用医薬品(OTC薬)の適正使用は、セルフメディケーション推進において重要である。しかしOTC薬添付文書は限られた紙面に文字情報のみで記載され、利用者が必要な情報を見つけることが難しい。これまでに著者らは、添付文書の「次の人は服用しないで下さい」と「服用前に相談して下さい」にある注意事項をそれぞれ1つのイラストで表し、必要な情報を視覚的に伝えられるかを学生と利用者を対象に検討した(倉田ら,医薬品情報学.2016. 18(4),223-234)。正答数を全回答数で割った理解度を算出したところ、「服用禁止」からなじみがある「妊婦又はその可能性のある人」等は理解度が75%以上と高く、なじみのない「医師から血液の異常を指摘された人」等は理解度が25%以下と低かった。また、これらイラストを挿入した仮想の添付文書と従来の添付文書(文字のみ)のどちらが、記載情報への注意を引きつけるか、読みやすさを向上させるか等を検討した(倉田ら,医薬品情報学.2018. 20(1),20-28)。アイトラッカーによる解析で、「授乳婦は服用禁止」や「服用前の相談」はピクトグラムがある添付文書で視点の停留時間が有意差に長かった。学生の主観評価は、高い理解度のピクトグラムがあるもの、低い理解度のピクトグラムがあるもの、レイアウトのみ変更したもの、従来の添付文書の順に「読みやすい」であった。研究課題名:抗酸化酵素ヘムオキシゲナーゼ-1誘導におけるα, β-不飽和カルボニル構造の役割研究代表者:大西 正俊(福山大学 薬学部薬学科) 脳出血とは、何らかの原因で血管が破れ、脳実質へ血液が漏出した病態をいう。現在、本邦において、脳出血は死亡者数も要介護者になる原因としても上位を占めており、有効な治療薬開発が待たれている。我々はこれまでの研究により、脳内における免疫担当細胞であるミクログリアに抗酸化酵素ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1を誘導すると、出血による神経障害に対して保護効果を示すことを明らかにした。そこで本研究では、ガジュツの抗炎症成分であるデヒドロクルジオンがHO-1を誘導するか検討した。その結果、デヒドロクルジオンの持つα, β-不飽和カルボニル構造が酸化ストレスセンサータンパク質Keap1と相互作用することが示唆された。HO-1は、Keap1-Nrf2経路によって誘導される。すなわち、Keap1の構造変化により両者が離れると、Nrf2が核内に移行し、HO-1遺伝子のプロモーターおよびエンハンサー領域が活性化される。そこで、Keap1と相互作用しうる部分構造としてα, β-不飽和カルボニルの役割を確立するため、それを持つショウガオールと持たないジンゲロールの作用を比較検討した。その結果、ショウガオールのみがミクログリアにおいてKeap1と相互作用し、Nrf2の核内移行、およびHO-1 E2エンハンサーの活性化を通じて、HO-1を誘導し、in vivoマウス脳内出血モデルに対して神経保護作用を示すことが明らかとなった。本研究の知見は、HO-1誘導剤開発におけるα, β-不飽和カルボニル構造の有用性を提案するものである。S78川 崎 医 学 会 誌

元のページ  ../index.html#82

このブックを見る