医学会誌44-補遺号[S30]
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研究課題名: 振動乗り心地評価のための幼児の理論モデルに関する研究研究代表者:大田 慎一郎(岡山県立大学 情報工学部人間情報工学科) 幼児が乗車する乗り物において、路面から幼児へ過大な振動が伝達される可能性がある。幼児の振動低減を検討するうえで、理論モデルを構築することが重要である。幼児の身体的特徴として、成人よりも体全体に対する頭部の比率が大きく、関節部が未発達であるためやわらかい。したがって、幼児の振動を詳細に再現するためには幼児の振動特性を調査し、それに基づく理論モデルを構築する必要がある。 そこで、本研究では、幼児-ベビーカー系の理論モデルを構築し、妥当性を検証する。まず、幼児系において頭部の回転運動、胴体部の上下方向の並進運動を再現するため、2自由度モデルとした。ベビーカー系において、上下方向の並進運動、ピッチング方向の回転運動を再現するため、2自由度モデルとした。よって、本研究では4自由度の幼児-ベビーカー系の理論モデルを構築し、周波数応答について数値解析を実施した。数値解析と測定実験の結果を比較したところ、周波数応答特性がほぼ一致したことから、理論モデル及び数値解析手法の妥当性が示された。研究課題名: 周期的伸展刺激装置を用いた慢性腎疾患の新しいin vitro モデルの研究研究代表者:入江 康至(岡山県立大学 保健福祉学部栄養学科) 心腎症候群をもたらす慢性腎臓病(以下、CKD)の動脈硬化は一般的な動脈硬化とは異なる特徴を持つが、その機序については不明な点が多い。CKDについて薬理学的な解析を進めるため、我々は新しい糸球体高血圧のin vitro モデル系を確立した。この系では、ウシ糸球体内皮細胞由来の培養細胞株GEN-Tをシリコン製チャンバーに播種し、機械的伸展刺激を加える。GEN-T細胞のトランスクリプトーム解析を行ったところ、伸展刺激により白血球活性化などいくつかの動脈硬化進展にかかわる遺伝子群が発現誘導されること、その発現調節にTRPチャネルが関与することを見出した。また、上記培養上清を血管平滑筋培養株A-10細胞の培養液中に添加したところ、A-10細胞において分化相マーカー遺伝子の発現が減少し、増殖・遊走相マーカー遺伝子の発現が上昇した。一方、非対称性ジメチルアルギニン(asymmetric NT, NG-dimethylarginine,: ADMA)は血管平滑筋細胞の弛緩に関わるNOS(一酸化窒素合成酵素)の内因性の阻害物質であり、CKD患者では血中濃度上昇することが知られているが、上記培養上清中でADMA濃度が上昇していることを見出した。このように、我々が確立した新しいin vitro モデル系は、CKD病態下で見られる心腎連関を培養細胞レベルで再現できる可能性を示唆した。― 岡山県立大学・福山大学・川崎医療福祉大学 ―S77

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