医学会誌44-補遺号[S30]
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29大-1:骨髄異形成症候群から急性白血病へ移行する分子機構の探索研究代表者:通山 薫、木田 潤一郎(生化学系分野病態検査学)【背景・方法】骨髄異形成症候群(MDS)は急性白血病へ移行する潜在性をもつが、その機序は不明な点が多い。我々は以前にMDS患者からMDS92細胞株及びその芽球性亜株MDS-Lを樹立した。MDS-LからIL-3存在下及び非存在下での培養により、MDS-L-2007及びMDS-LGFをそれぞれ樹立した。白血病移行の機序を探索するために、これらの細胞株に対して全エクソンシーケンスを行い、さらに変異の起源を調べるために患者骨髄細胞に対してultra-deep target sequencingを行った。【結果】(1)TP53変異は患者骨髄細胞に存在し、全ての細胞株に引き継がれた。(2)CEBPA変異は患者骨髄細胞の一部に存在した。(3)NRAS変異は培養途中で偶発的に出現した。(4)HIST1H3C(K27M)変異(H3-K27M)はMDS92からMDS-Lへの移行過程で新たに出現した。H3-K27M変異をもつ細胞は、IL-3存在下では増殖優位性を示したが、IL-3非存在下では示さなかった。【結論】ドライバー変異の蓄積がMDS細胞株樹立に繋がったことが示された。H3-K27M変異をもつ細胞の増殖優位性がIL-3の有無に影響されたことから、異常クローンの拡大はゲノム・エピゲノムの状態だけでなく、周辺環境中の液性因子にも影響を受けることが示唆された。29大-2:NAFLD合併2型糖尿病患者における糖尿病治療薬の影響 -経口糖尿病治療薬3剤の比較-研究代表者:金藤 秀明、木下 智絵(生化学系分野分子代謝内分泌学)【背景】糖尿病は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症進展の危険因子であり、肝硬変、肝細胞癌の発生リスクは非糖尿病患者の約2倍高い。【目的】T2DM合併NAFLDに対する糖尿病治療薬の影響を検討する。【方法】T2DM合併NAFLD患者98例を対象に、ピオグリタゾン(TZ)、グリメピリド(SU)、ダパグリフロジン(SG)を用い、開始28週後の脂肪肝(CT; L/S比)の変化に対する影響の違いを多施設共同無作為化比較試験にて検討した。【結果】患者背景は、年齢59歳、DM罹病期間7.2年、HbA1c 7.5%、BMI 28.8kg/m2、L/S比 0.74、ALT 47U/Lで3群に差はなかった。 L/S比はTZ群とSG群でSU群に比し改善したが、TZ群とSG群に差はなかった。脂肪肝改善への寄与因子を検討したところ、ΔL/S比はΔBMI、Δ内臓脂肪面積(VFA)、ΔHbA1c、Δinsulinと負相関し、Δadiponectinと正相関した。重回帰分析の結果、L/S比の改善はVFAの減少、adiponectin増加と関連した。また、各治療群のL/S比変化は、共通してΔVFAと負相関したが差異もみられ、TZ群ではΔadiponectinと正相関、SU群ではΔHbA1cと負相関、SG群ではΔinsulinと負相関した。【総括】T2DM合併NAFLDに対する TZの有効性はすでに確立しているが、SGはTZと同等の効果を示した。一方、両剤による脂肪肝改善の機序には差異があった。― 大学院 ―S75
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