医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-3:CD44リガンドを用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法の特許開発 研究代表者:加藤 茂樹(呼吸器内科学)【目的】我々はこれまでにダニ抗原誘発マウス慢性気管支喘息モデルを作成し、CD44のリガンドの1つであるガレクチン9(Gal-9)を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法(SLIT)の有効性を見いだした。本研究では、喘息患者への臨床応用を目指して、人体へ投与可能なCD44リガンドであるヒアルロン酸(HA)をアジュバントとして用いた新規アレルゲン特異的SLIT(HA/SLIT)の有効性を検討する。【方法】ヒトの軽症~中等症のダニ誘発アトピー型喘息患者を対象とした臨床応用を念頭に置き、SLITに使用するダニアレルゲン(鳥居薬品から提供)を用いて、経鼻感作の回数を調整し(週5日3週)、マウス軽症慢性喘息モデルを作成する。本疾患モデルに対して少量のダニアレルゲンにHAをアジュバントとして加えたHA/SLITを施行し(週5日2週)、治療効果を判定する。【結果】ダニアレルゲンだけでは有意な改善を認めなかったが、HAをSLITに加えることにより、喘息の特徴である好酸球気道炎症、気道過敏性の亢進、および血清IgE抗体価の上昇を有意に改善させた。これらの治療効果はGal-9とほぼ同等であった。【考察】HAは、アジュバントとしてダニアレルゲンに加えることによりSLITの効果を増強した。今後、HAの至適分子量および添加量に関して検討を加える。さらに、HAの作用機序に関しても研究を進める。29基-26:抗原変異を伴うインフルエンザウイルスの未来流行株予測システムの開発研究代表者:内藤 忠相(微生物学)【背景・目的】季節性A型インフルエンザウイルスでは頻繁に抗原変異が起きるため、流行予測から選定したワクチン株と実際の流行株との間で抗原性が一致せず、ワクチン効果が著しく減弱するという深刻な問題が存在する。その解決のため、次シーズン以降の流行株(未来流行株)に起きる抗原変異部位を予め推測可能なシステムを開発する。【方法・材料】現在の流行ウイルス株(A(H1N1)pdm09株)を元株とした変異ウイルスライブラリー(変異ウイルスの集合体)を作出して現流行株の感染者から取得した抗血清と反応させ、反応後も感染力を失わない「免疫逃避株」を単離する。単離した「免疫逃避株」を現流行株と詳細に比較解析して未来流行株候補を同定する。【結果・考察】逆遺伝学的手法によりA(H1N1)pdm09株のPB1ウイルスポリメラーゼを低忠実性に改変した組換えウイルスA(H1N1)pdm09-PB1[Tyr82Cys]置換株(変異導入効率が野生株と比較して約3倍向上)を作製して培養細胞内で増幅させ、全てのウイルスタンパク質に多種多様なアミノ酸変異が導入された変異ウイルスライブラリーを作出した。プラークアッセイにより、本ライブラリーに野生株と増殖能力が異なる様々な変異ウイルスが含まれることを確認した。現在、実験動物に現流行株を感染させ取得した抗血清を用いて、現流行株に抗原変異が生じた「免疫逃避株」の単離を行っている。S74川 崎 医 学 会 誌

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