医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-113:腸炎モデルを用いたミトコンドリア機能改善薬(MA-5及び#35)の腸管炎症治癒効果に関する研究研究代表者:眞部 紀明(検査診断学(内視鏡・超音波))【背景】近年、炎症性サイトカインがその病態に大きく関わる炎症性腸疾患の病態にオートファゴソームの遺伝子変異が関与していることが推察されており、潰瘍性大腸炎とミトコンドリア機能との関連性が推察されている。ミトコンドリア機能改善効果を有するインドール酢酸(IAA)を基にした化合物ライブラリーの中の35番目の化合物:MA-35(#35)には、抗炎症・抗線維化作用、TNF-α(炎症)とTGF-β(線維化)の2つの主要なサイトカイン経路を阻害する作用のあることが証明されているが、潰瘍性大腸炎に対する効果については不明である。【目的】潰瘍性大腸炎の動物モデルであるDSS腸炎モデルを作成し、MA-35(#35)の治癒促進効果について検討する。【対象と方法】DSS腸炎モデルを作成し、MA-35 10mg/kg、MA-35 30mg/kg、CMC 200μl、投薬なし(DSSのみ)の4群(5匹ずつ)に分類し、それぞれのDAI score、大腸組織の病理学的評価の違いを検討した。【結果】CMC群、投薬なし群はいずれも高度な炎症を示し、体重も減少していた。一方、MA-35 30mg/kgでは体重減少も軽度にとどまり、病理学的評価では炎症反応が抑制されていた。【結論】DSS腸炎モデルでMA-35は抗炎症効果を有することが明らかになった。今後はMA-35の抗炎症効果のメカニズムを血中および大腸粘膜のTNF-αの観点から明らかにしていく予定である。29基-112:非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)における予後にかかわる因子と非侵襲的診断法の工夫研究代表者:川中 美和(総合内科学2)【目的】肝生検を施行したNAFLD症例に対して、shear wave elastography(以下SWE)と肝線維化マーカーを組み合わせること肝線維化進展症例の診断能の向上について検討を行った。【対象および方法】①肝生検およびSWEを施行し、肝線維化マーカー(4型コラーゲン7S、WFA+M2BP、ヒアルロン酸、FIB4Index)の測定を施行したNAFLD患者100名を対象とした。これらの症例のSWE値と肝線維化マーカーの比較検討を行った。SWEの測定は東芝社製Aplio5003.75MHzプローブを用いた。【結果】4型コラーゲン7S、WFA+M2BP、ヒアルロン酸、FIB4IndexとSWEを組み合わせたstage3以上のAUCはそれぞれ0.86、0.82、0.86、0.88と上昇し、単一のマーカーの場合よりも診断能の上昇をみとめた。SWEとⅣ型コラーゲン7Sの診断能が最も優れていた。また、SWEと線維化マーカーの両方を併用することによりStage3以上の全症例を拾い上げることができた。【結語】NASHにおけるSWEは簡便に線維化進展の診断が可能であり、さらにそれらにバイオマーカーを組み合わせることにより肝線維化診断能が上昇した。以上より線維化の低いNASH症例やNAFLを識別し、肝生検を減少させる可能性があり、NAFLDの予後の改善につながると思われた。S72川 崎 医 学 会 誌

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