医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-69:サルコペニアに対する抗加齢医薬品の開発研究代表者:砂田 芳秀(神経内科学) 健康寿命を短縮する加齢性筋萎縮(サルコペニア)に対する治療法の開発は、超高齢化社会を迎えたわが国の課題である。マイオスタチンは胎生前期には筋の原基である体節に、胎生後期から誕生後は骨格筋に特異的に発現するTGF-β分子で、ノックアウトマウスの骨格筋量が、野性型マウスの約2倍に増加することから、骨格筋量を負に制御すると考えられている。われわれは筋ジストロフィーモデルマウスで、マイオスタチン活性亢進による筋萎縮の分子機構を世界に先駆け明らかとした(Ohsawa, et al., J Clin Inv 161, 2006)。本研究は、サルコペニアをマイオスタチン/TGF-βの恒常性破綻病態と仮説して、その阻害による医薬品の開発を目指した。本年度は、マイオスタチン活性阻害マウスと老化モデルマウスの交配によって、マイオスタチン活性阻害老化モデルマウスを作出した。このマウスでは、筋萎縮ばかりでなく、骨粗鬆症、腎硬化症が改善することを発見した。次年度は、作出したマウスの骨格筋・骨・腎蔵の組織生化学解析、マイオスタチン/TGF-βを標的とした新規医薬品開発に取り組みたい。国民の健康寿命延伸のため、マイオスタチン/TGF-βを標的とした新規医薬品開発を本学から発信したい。26基-31:胎児心臓モデルの構築 -ナビゲーションシステム構築と胎児心臓の構造評価の自動化を目指して-研究代表者:下屋 浩一郎(産婦人科学1)【背景】胎児心臓超音波検査法において、Spatio-Temporal Image Correlation(STIC)法を中心とする3次元超音波検査法の導入によって、出生前胎児心臓スクリーニング検査法の改善が報告されている。しかし、これには、検査者の十分な解剖学的理解が必要である事に変わりはない。特に立体的な胎児心臓に対する解剖学的理解をどのようにトレーニングするのか?と云ったことから、本研究は出発した。【1】胎児心臓3次元モデルの作製 同モデルはSTIC法で得られた妊娠28週の胎児心臓超音波3次元データから3方向からの断層像を格子状に配列して、Geomagic FreeForm Plusを用いて心臓内腔(各心室・心房腔・各弁構造・卵円孔構造・下大静脈弁)、血管(上大静脈・下大静脈(臍静脈・静脈管・肝静脈)・肺静脈、大動脈・肺動脈・動脈管)、心臓筋層といった構造物を超音波画像からそれぞれの境界領域を目視合成し、3D Printerで出力作成を行った。【2】胎児心臓超音波スクリーニング・トレーニングソフトウェアの開発 作製されたモデルは3次元情報を持つモデルであり、これを胎児心臓超音波トレーニングソフトウェアへ発展させるため、OsiriXを用いて任意断面表示可能な胎児心臓モデルの表示ソフトを作成した。S68川 崎 医 学 会 誌

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