医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-89: 珪酸曝露下での免疫細胞における自己免疫疾患誘導分子の探索研究代表者:李 順姫(衛生学) 珪肺症では、肺の線維化に伴う慢性の呼吸不全の他に、自己免疫疾患を高頻度で合併することが報告されている。実際、自己免疫疾患未発症ながらも珪肺症患者では自己抗体が出現しており、確かに自己免疫疾患へ傾向していることを示している。 近年、自己免疫疾患の発症や増悪に細菌や感染が密接に関わっていることが報告されている。すべての珪肺症例で自己免疫疾患が併発するとは限らないことから、患者の遺伝的背景や環境要因に加え「感染の有無」も関連することが考えられる。本研究では、珪肺症における自己免疫疾患発症の増悪に何らかの「感染」が関与しているか明らかにする目的で、ex vivoで珪酸とToll Like Receptor(TLR)リガンドの混合培養による免疫動態への影響を検討した。健常人末梢血由来T細胞および樹状細胞への珪酸曝露、TLR リガンド添加により変化するmRNA、サイトカインの同定を行った。その結果、珪酸曝露下、ある種のTLRを加えると数種類の炎症性サイトカインの増減が検出された。この増減は珪酸とTLRリガンドの組み合わせで変わることも明らかとなった。 この結果は、珪酸曝露下で異なるTLR刺激が入ると、その応答も変わることを示したもので、外来の異物の侵入(感染)が珪肺症における自己免疫疾患発症へのきっかけになりうるという本研究の仮定を裏付けるものと考えている。29基-105:ナノシート化合物のNK細胞への毒性影響研究代表者:西村 泰光(衛生学) チタン酸化物は広く利用されているが、IARCが二酸化チタン(TiO2)の分類引き上げを行うなど、特に“チタン酸化物ナノ物質”の毒性が懸念されている。チタン酸ナノシート(TiNS)は厚さ1nm以下の優れた2Dナノ物質として期待されているが、我々は産業衛生学的観点からヒトPBMCを用いて、TiNSが石綿と同程度の毒性でカスパーゼ依存性アポトーシスを誘導し、単球では同時に著しい空胞形成がみられ、TiNS曝露時の空胞形成とエンドソーム機能との関連性を明らかにした。また、PBMC培養時のTiNS曝露がNK細胞上の代表的活性化受容体の1つNKp46発現量減弱に作用することを確認した。そこで、NK細胞のアポトーシスを測ると共に単球のリソソーム量の変化をNBD-PZ染色により測定し、TiNS毒性機序と抗腫瘍免疫機能への影響を考察した。TiNS曝露下のPBMC培養中にはAnnexin+アポトーシス細胞が増加したが、単離NK細胞培養時には見られなかった。TiNS曝露下培養2日後の単球中のリソソーム量はTiO2粒子曝露時と同程度であったが、7日後には著しく増加し、TiO2曝露との差は5倍であった。これまでの研究結果と併せ、以上の結果はTiNS毒性機序におけるエンド/リソソーム機能不全の存在を示すと共に、単球・マクロファージ系細胞への毒性を介したTiNSの抗腫瘍免疫機能への曝露影響を示唆する。S66川 崎 医 学 会 誌

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