医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-106:腸内細菌叢と炎症を制御する消化管BST-1/CD157の機能解析研究代表者:石原 克彦(免疫学) 腸管-神経-免疫連関制御分子Bone marrow stromal cell antigen-1(BST-1)/CD157はGPIアンカー型のADP-ribosyl cyclaseであり、NADから産生されるcyclic ADP-riboseはryanodine受容体を介して小胞体からCa++の放出を誘導する。腸管におけるBST-1の機能探索のためにBST-1欠損マウス(Bst1KO)と野生型対照C57BL/6J(B6J)の糞便細菌叢をT-RFLP法にて比較したところ、2種類のOTU(≒菌種)で差を認めた。しかし、由来の異なる2系統において搬入時の腸内細菌叢が異なっていて、そのまま変わらずに継続維持されている可能性が否定できないことから、以下の方法で検証した。Bst1KOとB6Jの各交配を同期して開始し、それぞれの妊娠マウスを同一ケージ内で出産させ、両系統が全く同一の条件で育つ環境を作った。盲検的に8週齢で糞便のT-RFLP解析を委託、10週齢でDSS誘発大腸炎(3%DSS 5日間、通常水2日間)を行い、観察と組織の評価を行った。 T-RFLPで糞便腸内細菌叢の構成に遺伝子型の影響は認めなかった。しかし、DSS誘発大腸炎において5-7日目において経過と一致して程度の異なる組織傷害を呈する2群が認められ、軽症群の遺伝子型はBst1KOであった。BST-1は腸管において炎症促進性機能を有する。29基-51:ヒトCD8+T細胞亜株の機能に及ぼす長期石綿曝露影響研究代表者:武井 直子(衛生学) 石綿曝露は悪性中皮腫を引き起こすことで、抗腫瘍免疫機能への影響は不明な点が多い。抗腫瘍免疫においてnaïve CD8+T細胞は適切な細胞やサイトカインの環境下で増殖を伴い細胞傷害性T細胞(CTL)に分化する。分化したCTLは細胞内の傷害顆粒(lytic granule)にgranzyme Bやperforinを貯え、標的を認識すると脱顆粒によってこれらの因子を分泌し、標的細胞を殺傷することが知られている。我々は既に、アロ刺激培養時の石綿曝露がCD8+T細胞の増殖抑制を伴いCTL分化を抑制することを見出した。また、悪性中皮腫患者のCD8+リンパ球では刺激後のperforinレベルが低下することやIFN-γ産生能が減少傾向を示すことを既に報告している。本研究では、ヒトCD8+T細胞株を用いて長期石綿曝露亜株を作成し、長期石綿曝露がヒトCD8+T細胞の機能に及ぼす影響を調べた。30μg/mlの濃度の白石綿添加/非添加培地中でヒトCD8+T細胞株EBT-8を1カ月間培養維持し、石綿曝露亜株及び対照亜株を作成した。機能解析にはflow cytometry及びELISAを用いた。30μg/mlの長期石綿曝露はgranzyme B産生能に影響を及ぼさなかったが、perforin+細胞比率を著しく抑制した。また、抗CD3抗体を用いた刺激によるCD107a+細胞比率の増加は石綿曝露亜株と対照亜株の間で差は認められなかったが、IFN-γの分泌量は長期石綿曝露によって抑制された。以上の結果は、長期石綿曝露によってCD8+T細胞のperforinレベル及びIFN-γ分泌量が抑制されることを示す。悪性中皮腫患者で認められたCD8+リンパ球の機能不全と石綿曝露影響との関連が示唆される。S65
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