医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-73: TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)新規遺伝子変異の炎症惹起メカニズムの解明研究代表者:平野 紘康(リウマチ・膠原病学)【背景】TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)は、TNFRSF1A遺伝子変異を有する周期性発熱症候群である。既知のR92QやT61I変異は浸透度の低い遺伝子変異である一方で、T50M変異は重症表現型を呈し、変異TNFR1の細胞表面発現が低下することが知られている。今回我々は、周期性発熱を呈する1家系2名の症例からG58V/T61I変異を同定した。G58V変異は新規報告であり、病態との関連を検討した。【方法】野生型(WT)と変異TNFRSF1A(T50M、R92Q、G58V/T61I、G58V、T61I)を発現するプラスミドを、HEK-293細胞に遺伝子導入し、24時間後のNF-κBプロモーター活性を評価した。また、細胞内と細胞表面のTNFR1発現をフローサイトメトリーで観察した。【結果】T50MとG58V変異でNF-κB活性は有意に低下した(T50M 21.5 ± 3.6%; G58V 34.8 ± 4.4%; G58V/T61I 56.7 ± 23.9% vs. WT)。また、R92QとT61I変異では細胞表面上にTNFR1が発現する一方、T50MとG58V/T61IおよびG58V変異TNFR1の細胞表面発現は低下した。【結論】G58V変異TNFR1発現細胞では、T50M変異と同様、NF-κB活性の低下とTNFR1の細胞内蓄積を認めた。以上の結果からG58VはTRAPSの新規遺伝子変異と考える。29基-61: BST-1/CD157 による自然免疫シグナルの新しい制御機構の解明研究代表者:井関 將典(免疫学) Bone marrow stromal cell antigen-1(BST-1)/CD157はADPリボシルシクラーゼ活性を有するGPIアンカー型細胞膜外酵素である。我々はC57BL/6背景のBst1遺伝子欠損マウス(KO)をI型胸腺非依存性抗原(TI-I抗原、TNP-LPS)で免疫した際の抗原特異的抗体産生が亢進していることを新しく発見した。更に我々はBST-1が脾臓B細胞の亜集団であるtransitional type 2(T2)B細胞と辺縁帯(marginal zone: MZ)B細胞に発現しており濾胞(FO)B細胞にはほとんど発現していないこと、KO由来B細胞はLPSおよびCpG DNA刺激に対する増殖反応が特異的に亢進していることを明らかにしてきている。野生型(WT)およびKO脾臓から磁気ビーズ法およびFACSソーティングによって純化したMZ B細胞、FO B細胞を用いて培養実験を行った結果、KO MZ B細胞はLPS刺激時の細胞生存がWTに比べて亢進していることが分かった。しかし抗体産生細胞への分化はKOでも変化はなかった。従ってKO MZ B細胞の増殖と細胞生存の亢進が抗体産生細胞数の増加に繋がり、TI-I抗原に対する抗体産生が亢進している可能性が示唆された。今後はシグナル分子阻害剤、BST-1酵素活性の阻害剤を用いた解析、また細胞死関連遺伝子の発現解析等を行い、より詳細な制御機構を解明する。S64川 崎 医 学 会 誌

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