医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-60:骨代謝制御におけるpadi4または好酸球の役割り研究代表者:矢作 綾野(免疫学) 関節リウマチは慢性的に持続・進行する多発性関節炎を特徴とする自己免疫疾患である。多因子疾患であり種々の環境要因の複合によって自己免疫異常が生じると考えられる。一方、IL-6ファミリーサイトカインの信号伝達受容体サブユニットgp130の759番目のチロシンに変異を持つノックインマウスgp130F759は関節リウマチ様自己免疫性関節炎を自然発症する。特に、5ヶ月齢において後肢関節の可動性に非常に軽度な抵抗性を認めた事から、5ヶ月齢がgp130F759の関節炎発症最初期であると想定して詳細な解析を進め、発症に関与する細胞や分子を解明してきた。その結果、gp130F759は野生型に比べ、滑膜組織における好酸球の増加、Padi4遺伝子発現の増強を認めたことから関節炎発症初期に関係する因子であることが示唆された。そこで、好酸球欠損、Padi4欠損マウスを入手し、gp130F759と交配したところ、いずれの二重変異マウスも早期発症と関節炎の悪化を認めた。組織学的評価においてgp130F759単独と比較して顕著な骨破壊が認められたことから好酸球とPAD4は関節炎における骨破壊を抑制している可能性が示唆された。現在、単独欠損が骨の形成過程に与える影響を検討する為、4、8、12ヶ月のgp130F759、Padi4欠損、好酸球欠損マウス大腿骨、脛骨を回収しμCTを用いた骨解析を行っている。29基-72:SH3BP2を介したTNFの発現亢進が全身性エリテマトーデスマウスの自己抗体生産に与える影響研究代表者:笹江 友美(リウマチ・膠原病学)【背景・目的】全身性エリテマトーデス(SLE)は多彩な自己抗体を特徴とする自己免疫疾患である。我々は以前にSH3BP2がマクロファージ活性化およびTNF産生を調節すること、関節炎マウスの自己抗体産生を調節することを報告した。今回SLEモデルマウスの自己免疫現象・臓器病変進展におけるSH3BP2の役割を解析した。【方法】SLEモデルとしてFasの機能喪失変異を持つFaslprマウスを用い、SH3BP2機能獲得変異マウスと交配し二重遺伝子改変マウスを作成した。尿蛋白を評価し、12か月齢時に免疫担当細胞のsubsetをFlow cytometryで、血中自己抗体価をELISA法で評価した。また腎臓の病理組織学的解析を行った。【結果】SH3BP2機能獲得変異はFaslprマウスにおける生存率、蛋白尿、腎硬化所見を改善した。また、SH3BP2野生型Faslprマウスでみられた血中抗dsDNA抗体価上昇・自己反応性T細胞数増加もSH3BP2機能獲得変異により有意に軽減した。【結語】SH3BP2機能獲得変異Faslprマウスは、SH3BP2野生型のFaslprマウスと比較して自己免疫反応と病態進展が有意に改善することが確認された。現在その機序を解析しており、仮説としてSH3BP2機能獲得変異によるTNF産生亢進がFaslprマウスのapoptosis障害を一部解除したと考えている。S63

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