医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-43: 天疱瘡による自己抗体と単純ヘルペスウイルス感染が引き起こす表皮ケラチノサイトの変化に対する共通性・差異の解析研究代表者:山本 剛伸(皮膚科学) HSV感染症と天疱瘡は、表皮水疱内に棘融解細胞を認めるが、HSV感染症はウイルス感染症であるのに対し、天疱瘡は表皮ケラチノサイト間を結合するデスモグレイン(Dsg)に対する抗体が形成されて発症する。最近、粘膜型尋常性天疱瘡の発症、増悪にHSVが関与している可能性が示唆されているが、機序は不明である。 低Ca2+/高Ca2+培地でケラチノサイト(HaCaT細胞)を培養し、HSV-1感染後の感染細胞の形態、細胞間接着/細胞骨格蛋白の発現量/分布について解析した。Cell Tracker dyeを用いて棘融解、ウイルス性多核巨細胞形成の可視化モデルを確立した。天疱瘡の原因である抗Dsg3抗体を添加し、HSV-1を感染させ、感染細胞の形態、ウイルス複製能を検討した。 ケラチノサイトにHSV-1が感染すると、細胞内ケラチン、微小管の分布が大きく変化した。Cell Trackerを用いた解析では、高Ca2+培地のみ細胞膜の融合が証明され、多核巨細胞を形成した。一方、低Ca2+培地では細胞膜の融合は確認されず、棘融解細胞様を呈した。抗Dsg3抗体を添加した状態では、ウイルス感染細胞の形態、ウイルス複製能は非添加群と有意差を認めなかったが、多核巨細胞は小型化する傾向にあった。 抗Dsg3抗体は、感染細胞のウイルス複製には影響を及ぼさないが、他の要因で棘融解をより形成しやすい環境を形成すると考えられた。29基-62:新しい術中自己濃厚血小板浮遊液採取方法確立に関する臨床研究 研究代表者:種本 和雄(心臓血管外科学)【目的】将来的な血小板製剤の供給不足打開策である術前自己血小板採取法について、人工心肺回路から体外循環開始早期に採取する方法を確立し、少子高齢化に伴う将来的な血液製剤不足に対する有力な対策とする。【対象と方法】川崎医科大学倫理審査委員会の承認を得て、人工心肺を用いた心臓大血管手術を行った患者58例に対して、人工心肺開始早期に回路からヘモネティクス社製コンポーネントコレクションシステムL/N9000を使用して自己血小板製剤の作成を行い、プロタミン中和終了後に返血し、血小板数および血小板凝集能の変化について検討した。採血は手術開始時(A)、プロタミン中和後(B)、 自己血小板返血後(C)の3回行った。【結果】採取した自己血小板製剤は平均223.5ml±419で、血小板数としては平均5単位(3-16)の採取がされていた。(A)から(B)で血小板数は平均11.7万/μl減少し、(B)から(C)で平均2.4万/μl増加した。血小板凝集能は(B)から(C)でADP1μM凝集では3.0%±3.8、ADP3μM凝集では9.0%±6.5増加した。またcollagen2.0μg凝集では9.5%±9.5増加した。【結語】心臓大血管手術中人工心肺回路から有効な血小板凝集能を持った自己血小板を採取することが出来、それを返血することによって血小板数および血小板凝集能の改善が確認された。人工心肺回路からの自己血小板採取は、これらの手術での出血量減少および血液製剤使用量の削減についての効果が期待できる。S60川 崎 医 学 会 誌

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