医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-101:自己免疫性水疱症患者におけるヘルペスウイルス再活性化を予測するバイオマーカーの探索 研究代表者:青山 裕美(皮膚科学) 水疱性類天疱瘡(BP)は高齢者に発症する自己免疫性水疱症で、ステロイド全身投与が基本治療となる。高齢者に免疫抑制療法を行う場合しばしば感染症を合併し,時に死亡原因になることもある。そのため治療前に感染予知に役立つバイオマーカーが渇望されているが、まだ見いだされていない。 我々は、様々な臨床経過をたどったBP患者血清中サイトカインを網羅的に検討した。感染症に関連して変動するIL-10に着目し解析した。CMV感染症を発症してないBP治療開始前と寛解中再燃した14症例(平均年齢83.5才)をIL-10値6 pg/ml以上群(平均値:24.3 pg/ml)と6 pg/ml未満群(平均値:0.8 pg/ml)に分けて比較したところ、発症後2ヶ月以内の感染症発症率がそれぞれ、4/7 (57.1%)、0/7(0%)であった。CMV感染症を発症した2例は高値を示した(2929.3 pg/ml,57.13 pg/ml)。C7HRP陽性数と血清IL-10値の関係は、C7HRP陽性数が少なくてもIL-10が高い症例が多くみられ、相関がなかった。無症候性でC7HRP陽性群は、CMV発症群よりもIL-10が低い傾向にあった。血清IL-10値は感染症の合併リスクの予測因子になる可能性があるが、Cut off値の設定が課題である。29基-102:ウイルス感染症と発汗障害に着目した原因不明の炎症性皮膚疾患の病態解析研究代表者:片山 智恵子(皮膚科学) 近年、発汗障害が様々な炎症性皮膚疾患の原因になっていることがわかってきた。今回我々は、ウイルス感染症の後遺症として知られているPostherpetic hypohidrosis-related isotopic response:PHIR(もしくはWolf’s isotopic response)において、発汗障害に着目し発汗機能定量測定法(impression mold technique:IMT)を用いて病態の検討を行った。症例1は77歳男。帯状疱疹の既往があった。帯状疱疹罹患部位に一致して丘疹が多発、ステロイド外用治療に抵抗性であった。組織学的所見より扁平苔癬と診断、片側性で特徴的な臨床所見や経過からPHIR と考えた。IMTで扁平苔癬部の発汗低下を認め、VZV gE免疫染色は汗腺組織に陽性だった。発汗促進作用のある保湿剤の外用治療を行い、発汗低下が改善するとともに発疹は治癒した。症例2は43歳男、帯状疱疹罹患部位に一致して掻痒を伴う丘疹が多発、組織学的所見からアミロイド苔癬と診断、臨床経過からPHIR と考えた。IMTでアミロイド苔癬部の発汗低下があり、VZV gE免疫染色では真皮の炎症細胞に陽性、DCD染色にて汗腺や汗管内に汗の漏出がみられた。保湿剤によるラップ治療で軽快した。以上からPHIRによって生じる皮膚炎症性疾患の病態には発汗障害が関与している可能性が示唆された。S59

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