医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-57:癌細胞p53によるマクロファージ機能調節~遺伝子改変発癌マウスを用いて解析研究代表者:中村 隆文(産婦人科学1)【目的】p53遺伝子欠損腫瘍細胞がマクロファージの機能を制御して腫瘍の増殖進展に関与しているかを解析する。【方法】1)p53欠損発癌マウスを作製するため、SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて、上皮性未分化癌を発症するαT3マウスとp53欠損マウスを交配させ、Tail DNAを抽出してPCR法でp53遺伝子が欠損し、かつSV40 T抗原を発現するp53欠損αT3マウスを選択する。2)p53遺伝子がマクロファージの腫瘍免疫の機能に影響しているかを解析するためにp53欠損マウス、αT3マウスとp53欠損αT3マウスの腹腔内マクロファージを採取しフローサイトメトリーを用いてマクロファージのIDO発現を比較検討する。3)p53遺伝子欠損腫瘍細胞がマクロファージの機能に影響しているかを解析するために、αT3マウスとp53欠損αT3マウスの腫瘍から培養細胞を作製する。 正常マウス腹腔内マクロファージと各癌細胞と混合培養して免疫組織染色またはフローサイトメトリーを用いて正常マウス腹腔内マクロファージのIDOの蛋白発現を比較検討する。【結果】1)p53欠損αT3マウスはαT3マウスより腫瘍の浸潤進展が有意に増悪した。2)p53欠損αT3マウスはαT3マウスより腹腔内マクロファージのIDO発現が増加していることが判明した。3)αT3腫瘍培養細胞、p53欠損αT3腫瘍培養細胞と正常マウス腹腔内マクロファージを混合培養するとp53欠損αT3腫瘍培養細胞と混合培養した正常マウス腹腔内マクロファージのIDO発現がαT3腫瘍培養細胞より増加した。【結論】p53欠損腫瘍細胞がマクロファージのIDO発現を誘導して腫瘍免疫を抑制している可能性が示唆された。29基-104: 放射線化学療法における血液中カルニチン濃度の造血障害への関連性についての検討研究代表者:中西 秀和(総合内科学4)【背景】カルニチンは肝臓、腎臓、脳などで生合成される栄養素で、生体内では長期脂肪酸のミトコンドリア内への輸送に必須で、脂質の燃焼によるエネルギー産生(ATP産生)に重要な役割を担っている。また抗酸化作用、抗炎症作用、生体膜安定作用、抗アポトーシス作用を発揮することも判明している。近年ではカルニチン欠乏の血球への影響として、透析患者のエリスロポエチン不応性貧血や肝硬変患者の血小板減少や白血球減少に対してカルニチン補充の有効性が知られている。抗がん剤治療患者では、抗がん剤(プラチナ製剤、アントラサイクリン製剤およびアルキル化剤など)の投与、薬剤性や転移等による肝・腎障害、食事や筋肉量の低下など、さまざまな要因によりカルニチン欠乏を呈しやすいと考えられることから、抗がん剤投与患者におけるカルニチン欠乏が造血障害に及ぼす影響の有無を検討することとした。【方法】抗がん剤投与患者を対象として、血清カルニチン濃度を測定して評価。【結果】川崎医科大学学術集会にて途中経過を報告予定。S54川 崎 医 学 会 誌

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