医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-36:非小細胞肺癌細胞におけるPD-L1発現機構の解明:-EGF刺激とIFNγ刺激での比較解析-研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】非小細胞肺癌(NSCLC)に対して免疫チェックポイント阻害剤抗PD-1抗体の有用性が示されたが、課題として薬剤耐性とともに経済毒性が指摘されている。よって抗体薬より安価な小分子化合物によるPD-L1発現阻害法の開発は魅力的なストラテジーである。【方法】NSCLC細胞におけるPD-L1発現機構を明らかにすべく、NSCLC細胞株にPD-L1発現誘導因子として知られているサイトカインIFNgとEGFをそれぞれ暴露させ、細胞内シグナルの活性化をRTK抗体アレイで、microRNA発現をmicroRNAアレイで解析した。【結果】IFNg、EGFいずれもNSCLC細胞株においてPD-L1の発現を増強し、その効果はそれぞれJAK-STAT阻害剤、EGFR阻害剤でブロックされた。RTK抗体アレイ解析において、IFNgはSTAT1の活性化を、EGFはAKT, p44/22 MAPK, S6 ribosomal proteinの活性化を認めた。microRNAアレイ解析では、データ解析中である。【結論】IFNg、EGFいずれもPD-L1発現を誘導するが、関わる細胞内シグナルは異なる。小分子化合物によるPD-L1発現抑制の標的となりうる細胞内シグナルは、ドライバー遺伝子変異同様、患者ごとに異なる可能性がある。普遍的なPD-L1発現抑制の治療標的となりうるmicroRNAについて探索を進めている。29基-114:悪性中皮腫の組織型別分子標的の基礎的研究 研究代表者:瀧川 奈義夫(総合内科学4)【背景】中皮腫は病理学的に上皮型、肉腫型、および二相型に分類される。Receptor tyrosine kinase-like orphan receptor 1 (ROR1)は、発癌および癌の進展において重要な役割を果たしており、正常組織では発現が乏しい。私たちはこれまで、中皮腫細胞にもROR1発現が認められていること、およびROR1阻害により上皮型と肉腫型では異なる反応性があることを明らかにしてきた。今回、ROR1阻害によるmRNA発現が上皮型と肉腫型の悪性中皮腫細胞株で異なるか否かを検討した。【方法】上皮型(H2452)と肉腫型(H28)の悪性中皮腫細胞株にsiROR1を負荷し、mRNA発現をマイクロアレイ(Affymetrix GeneChip® Human Gene 2.0 ST Array)とRT-PCR法を用いて測定した。【結果】マイクロアレイでは、siROR1で50%以上抑制されたmRNAはH2452では191種類あったが、H28では54種類のみであった。このうち細胞増殖への関与が考えられる21種類を選択し、それらのmRNA発現をH28と H2452においてRT-PCRで定量したところ、19種類はいずれの細胞株でも発現が低下していた。1種類はいずれでも上昇していたが、他の1種類はH2452では上昇し、H28では低下していた。【結論】肉腫型では上皮型と異なるROR1シグナルの可能性が考えられた。S52川 崎 医 学 会 誌

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