医学会誌44-補遺号[S30]
55/94

29基-37:非小細胞肺癌における局所免疫機構に関わる形態学的研究研究代表者:中田 昌男(呼吸器外科学) 悪性腫瘍の進展あるいは制御に局所免疫が大きく関わっていることが近年明らかにされ、治療にも応用されるようになった。原発性非小細胞肺癌(NSCLC)においても、免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1阻害薬が臨床応用され、その有効性が報告されている。しかし、本薬剤の効果予測因子が未だ十分には明らかにされていない。これまでに行われてきた腫瘍免疫に関する形態学的な研究は、腫瘍周囲の活性リンパ球もしくは制御性T細胞などの発現、あるいは腫瘍におけるPD-L1の発現を個々に解析したものが多くを占めている。しかし、局所の免疫応答では、攻撃側と制御側のバランスでその反応が左右されるはずであるから、ひとつの因子のみの解析では十分とは言えない。そこで、川崎医科大学附属病院で切除したcT1-2N0M0肺腺癌のパラフィン包埋切片を用いて、PD-L1、CD8のそれぞれの免疫染色を行い、これらの発現と臨床病理学的因子ならびに予後との関連を検討し、その意義について考察する。29基-56: 抗CCR4抗体モガムリズマブを投与した非小細胞肺癌症例における免疫応答解析研究代表者:黒瀬 浩史(呼吸器内科学)【背景】ヒト化抗CCR4抗体(モガムリズマブ)は、抗体依存性細胞傷害活性により、制御性T細胞(Treg)を含むCCR4陽性細胞を除去し、抗腫瘍免疫を賦活化する可能性がある。我々は、固形がん患者に対するモガムリズマブの第Ia/Ib相多施設共同治験を実施し、安全性および末梢血Treg除去効果を確認した。末梢血中のFoxP3陽性Tregは、モガムリズマブの最低容量である0.1mg/kg(ATLで承認されている10分の1)であっても効果的に除去されていた。【目的】モガムリズマブ第I相試験終了後に化学療法を再導入した肺癌患者6例について、試験前後の化学療法(前治療、後治療)の効果を後ろ向き検討した。【結果】前治療は奏功が2/6例であったのに対し、後治療は4/6例に増加した。試験後に腫瘍組織の再生検を行った3例(PR2例、SD1例)について免疫組織化学染色を追加し、全例でCCR4+Tregの減少を確認した。また、PRであった2例でCD3+ T細胞、PD-1+ 細胞の増加、うち1例で腫瘍細胞のPD-L1発現上昇を認めた。一方、SDであった1例でCD3+ T細胞、PD-1+ 細胞の減少と腫瘍細胞のPD-L1発現低下を認めた。【考察】モガムリズマブによるTreg除去により腫瘍微小環境に炎症を惹起し、化学療法の再感受性を獲得する可能性がある。S51

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る