医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-45:白血病治療における接着因子による化学療法耐性化克服のための研究研究代表者:岡本 秀一郎(生化学) 急性白血病治療において化学療法耐性細胞からの再発は、治療成績向上の大きな妨げとなっている。耐性の原因として、骨髄微小環境での細胞間接着により誘導される耐性化(cell adhesion mediated drug resistance(CAM-DR))がある。現在、CAM-DR克服に向けて様々な研究が行われているが、大きな成果は得られていない。 そのため申請者は、CAM-DR克服に向け基礎研究を開始した。まず、CAM-DRの解析を行うため白血病細胞が接着する骨髄内環境の再現に取り組んだ。白血病細胞の接着する因子としてフィブロネクチンなどの単一因子による解析も検討したが、より骨髄内を詳細に再現するためにはフィーダー細胞との接着が有効と考えた。その結果、マウス骨髄間葉系細胞株であるMS-5をフィーダーとして使用し、白血病細胞としてヒト白血病細胞株のU-937を用いた。その結果、U-937がフィーダー細胞内でコロニーを形成する敷石上領域が確認でき、骨髄内環境を再現する培養条件の確立に至った。現在、この培養条件を用いてCAM-DR克服に向け研究解析を進めており、成果を報告する。29基-100: 第3世代EGFR-TKI耐性化変異に伴う分子生物学的変化とその特徴研究代表者:越智 宣昭(総合内科学4)【背景】上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)はEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に劇的な治療効果をもたらすが、獲得耐性が臨床的に問題となる。第1、第2世代EGFR-TKIに対する耐性としてT790M変異、第3世代EGFR-TKIへの耐性としてC797S変異が知られている。それら耐性機序の解明と克服が今後の課題となるが、今回、その基盤となるBa/F3細胞をベースとした各種EGFR遺伝子変異を遺伝子導入した系を新たに立ち上げることとした。【方法】マウス骨髄系細胞Ba/F3にレトロウイルスを用いて各種EGFR遺伝子をトランスフェクションした。AddgeneよりベースとなるEGFRプラスミドを入手し、T790M変異、T790M+C797S変異はSite Directed Mutagenesisを用いて新たに変異を導入した。【結果】活性化変異(L858R、19Del)変異導入細胞では、第1~3世代のEGFR-TKIに対し高い感受性を示し、T790M変異導入細胞では第1世代に高度耐性、第3世代では高い感受性を示した。また、T790M+C797S変異導入細胞では第3世代EGFR-TKIにも耐性を示し、これまでの基礎および臨床報告と合致する結果が得られた。【結論】これらの細胞株は、EGFR-TKI耐性克服のための研究手段となると考えられた。S50川 崎 医 学 会 誌

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