医学会誌44-補遺号[S30]
51/94

29基-65: 胃癌のリスクマーカーに関する研究研究代表者:塩谷 昭子(消化管内科学) 我々はこれまでにH. pylori菌除菌前後の検討でmiR-106bとmiR-21が胃癌高リスク群において有意に高く、除菌後の胃癌高リスク群の新しい血清マーカーとして有用である可能性を以前に報告した。(Shiotani A, et al. British Journal of Cancer.2013;109:2323–2330.)。miRNAは組織や発生段階特異的に発現し、細胞の増殖や分化、アポトーシスなどに関わり、エクソソーム内に内包されたmiRNA(exo miRNA)が血中へ排出することが確認されており、さらにexo miRNAのバイオマーカーとしての有用性が種々の癌において報告されている。そこでH. pylori除菌後の胃癌発症患者および除菌後対照群患者において、癌関連のexo miRNA発現を解析することで、除菌後胃癌の新たな分子マーカーの同定を試みることを目的とした。 当院に通院する患者の中から胃癌治療後除菌群、除菌後胃癌群、対照群を対象に採血を行い、血清からエクソソーム由来のmiRNAを抽出し、Multiplex miRNA assay(FirePlex™; abcam, Cambridge, MA USA)による解析で、癌関連65種類のmiRNAを定量し比較した。その結果、除菌後胃癌群が対照群と比較し、miR-21(p=0.001)、miR-27(p=0.037)、miR-148(p=0.003)、miR-181(p =0.017)が有意に高発現であった。また胃癌治療後除菌群が対照群と比較し、miR-148(p=0.035)が有意に高発現であった。次にそれぞれの群で症例を追加しReal time PCRを実施したところ、3群間の比較において除菌後胃癌群が対照群と比較し、miR-21(1.42×10-1vs.1.03×10-1、p =0.004)、miR-181(1.12×10-2vs.0.80×10-2、p =0.047)が有意に高発現であった。以上のエクソソーム由来のmiRNAが除菌後胃癌のバイオマーカーとなる可能性が示された。29基-48: 乳癌glioma-associated oncogene発現の臨床病理学的検討研究代表者:鹿股 直樹(病理学)【背景】Glioma-associated oncogene(GLI)は、神経膠腫で高発現する物質として発見された因子で、細胞増殖や癌幹細胞との関連が報告されている。【材料と方法】浸潤性乳癌患者218名を対象とした。免疫組織化学的にHhシグナル伝達因子(sonic Hh [SHH], PTCH1, GLI1, GLI2)の発現を検討した。【結果】ホルモン受容体(HR)陰性HER2陽性はHR陽性HER2陰性に比べ、GLI2発現が有意に高かった(P = 0.0295)。HR陽性HER2陽性またはトルプルネガティブは、HR陽性HER2陰性乳癌に比べSHH発現が有意に高かった(各々P < 0.001、P < 0.05)。臨床病理学的因子との相関では、組織学的グレードとSHH, GLI1, GLI2発現量とは正の相関を示した。HER2発現量はSHHと正の相関を示した。無病生存率、全生存率とHhシグナル伝達因子発現量(陽性対陰性)は有意の相関は認められなかった。【結論】HER2陽性乳癌においてSHHやGLI2発現が高いことが示され、Hhシグナル伝達の亢進が起こっていることが示唆された。Hhシグナル伝達因子発現の増加と組織学的グレードに正の相関が認められており、Hhシグナルの亢進が癌細胞の悪性形質獲得に寄与していることが示唆された。S47

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る