医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-66:マイオスタチン阻害によるアゾキシメタン誘発大腸腫瘍の機序解明研究代表者:松本 啓志(消化管内科学)【背景】大腸癌は、現在本邦において罹患数がもっとも多い癌であり、その予防法開発は国民健康上、重要な問題である。大腸癌の促進因子として肥満、特に内臓脂肪型肥満が、抑制因子として身体活動が、疫学的研究から指摘されているが、その分子生物学的理由についてはよくわかっていない。近年、骨格筋は収縮して関節を動かす運動器としての役割以外にも、ホルモン様生理活性物質を分泌する内分泌器官としての役割が注目されている。その分泌される生理活性物質の総称はマイオカインと呼ばれている。その中でも、マイオスタチンはTGF-βファミリーの分子で、筋肉量の調節のネガティブレギュレーターとして働くことが報告されている。現在までにマイオカイン、マイオスタチン阻害剤の肥満関連大腸腫瘍の発生抑制効果を検討された報告は、国内外でもいまだない。【方法】マイオスタチン遺伝子改変マウス(マイオスタチンドミナントネガティブ:BDF1/MSTNpro)に対してアゾキシメタン(AOM)を腹腔内に6回投与して、大腸腫瘍発生を誘発した。AOMの最適量を決定するために、0.8, 0.9, 1mg/kgの3郡に分けて検討した。AOM投与後、4週ごとに採血、再便およびCT撮影内臓脂肪・筋肉面積の解析を行った。大腸腫瘍の発生はマウス大腸内視鏡で確認し、最終的に解剖し腫瘍発生について確認した。【結果】マイオスタチン遺伝子改変マウス(24週齢)の体重(雄39.8±13.6g、雌31.6±0.7g)は、コントロール群と比較して増加(雄36.6±2.1g、雌27.2±1.6g)していた。AOM 0.8mg/kg, 0.9mg/kg投与したものは雄雌ともに25週まで観察を行ったが、両郡ともに大腸腫瘍発生は認められなかった。1mg/kg投与したものでは、コントロールおよびマイオスタチンドミナントネガティブ雄には共に腫瘍を認めなかったが、コントロール雌は3個、マイオスタチンドミナントネガティブ雌には8個と大腸腫瘍発生を認めた。腫瘍の大きさはコントロール雌は6mm3、マイオスタチンドミナントネガティブ雌は12mm3であった。【結論】マイオスタチン阻害は雄において大腸腫瘍抑制効果を示す、あるいは雌において大腸腫瘍増大を示す可能性がある。今後、匹数を増やし、機序解明の追加検討を行う予定である。S46川 崎 医 学 会 誌

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