医学会誌44-補遺号[S30]
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28基-92・29基-103:甲状腺腫瘍における高感度ドプラ(Superb Microvascular Imaging(SMI))、およびContrast SMI所見と病理学的血管新生との対比検討研究代表者:中島 一毅(総合外科学) 甲状腺腫瘍は元来、血流量の多い腫瘍である。そのため、これまでのコンベンショナルドプラ血流評価方法では、すべてHypervascularの腫瘍としか観測されず、良悪性の区別を血流から類推することは不可能であった。Sonazaoidによる造影超音波検査は、すでに乳癌領域では保健適応となっている有用性が確立している検査であり、甲状腺腫瘍においても、造影超音波で血流の差異が認められるかどうか、研究することとした。 安全性は担保されているが、保険適応外使用の研究であるため、承諾書が必要で、現在のところ、11例のみ実施できている。このうち、診断可能な動画情報が得られた5例について、保存動画をレトロスペクティヴに評価してみた。 内訳はAdenomatous Goiter2例、甲状腺乳頭癌3例である。症例が少ないので、評価するのは困難であるが、当施設で実施した別の乳腺腫瘍の血流研究で得られている診断手法と同様に、良性腫瘍では、血流がはっきりとして、直線的観測が可能であるのに対し、悪性腫瘍では血流が細かく、不規則にモザイク状に描出される印象である。しかし、元来の甲状腺腫瘍自体の血流量の多さから、乳腺腫瘍の様には簡単に血流動画の記録ができないことも判明した。今後、撮像法の工夫と症例を積み重ねていき、診断的有用性を検討したい。29基-58: 糖尿病宿主における発がんリスク増大の機序の解明 -TIGARの役割の検証-研究代表者:鶴田 淳(消化器外科学) TIGAR(TP53-induced glycolysis and apoptosis regulator)は解糖を抑制しペントースリン酸経路(PPP)を活性化し癌細胞の代謝性要求に応えるp53下流分子である。本研究はインスリン抵抗性発がんにおけるTIGARの役割を検証するのが目的である。ヒト大腸癌細胞株を用いての低濃度インスリン長期暴露により有意なTIGAR、Aktの発現を認めた。またC57BL/6マウス対照群、2型糖尿病モデルKK-Ay試験群でのmetabolic stress(HFD高脂肪食)投与実験で肝、膵、大腸組織においてTIGARは高発現した。さらにHFD負荷KK-Ayにおける膵β細胞では53非依存性TIGARの高発現を認める一方、HFD負荷KK-Ay大腸組織ではTIGARは有意に減少し、TIGAR発現に臓器特異性があることが示唆された。またTIGARノックアウトマウス(TIGAR KO)を用いた炎症関連2段階大腸発がんモデル(simple)において、1匹あたりの大腸腫瘍数は両群で差を認めなかったが、腫瘍量は有意にTIGAR KOの方が減少していた(p<0.01)。これによりTIGARは腫瘍発生ではなく腫瘍増殖を促進する因子であることが分かった。現在、C57BL/6対照群、TIGAR KO試験群としたインスリン抵抗性+2段階大腸化学発がんモデル(complex)において検証中である。S45

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