医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-44: 見かけの拡散係数による定量評価を加えたmodified PI-RADS Version 2は前立腺有意癌の検出能の向上に寄与するか?研究代表者:玉田 勉(放射線診断学)【目的】前立腺マルチパラメトリックMRI(mpMRI)を用いたPI-RADS version2の前立腺有意癌の検出能およびmpMRIで偽陰性となる病変の病理臨床的な特徴を明らかにする。【方法】対象は前立腺全摘術の前にmpMRIを受けた95症例(139前立腺有意癌病変)。MRIは3T装置を使用しT2強調像、拡散強調像および造影ダイナミックを撮像した。二名の放射線科医がMRI画像をPI-RADS version2(カテゴリー1から5の五段階評価)および古典的なoverall mpMRI criteria(3つの撮像法のなかで一つでも陽性所見を示した場合腫瘍ありと診断する)を用いて評価した。【結果】PI-RADSカテゴリー3以上を陽性とした場合の、前立腺有意癌の検出率は72.1%(98/136病変)であった。PI-RADSカテゴリー2以下の偽陰性38病変をoverall mpMRI criteriaを用いて評価した場合、造影ダイナミックは14病変を拾い上げることができた。Overall mpMRI criteriaにおいて検出不能であった17病変(12.6%)は、検出可能であった118病変(87.4%)に比して、有意に低いPSAとD’Amicoリスク分類および有意に高いみかけの拡散係数(拡散強調像から得られる水分子の拡散能の定量的指標:腫瘍の細胞成分と負の相関関係を示す)を示した。【考察】前立腺mpMRIの診断基準として用いられているPI-RADS version2の検出能は以前から使用されているoverall mpMRI criteriaに比して低かった。さらに、overall mpMRI criteriaにおいて偽陰性となる病変は、サイズが小さく、リスクが低くまた細胞成分が低い病変として特徴付けられた。本研究は、PI-RADSのさらなる改定の必要性を示唆した。29基-53:EOB-MRIの新たな診断アルゴリズムの作成及び評価 研究代表者:神吉 昭彦(放射線診断学)【目的】EOB-MRIに特化した診断アルゴリズム(modified LI-RADS)を作成し、診断能を評価する。【対象と方法】病理学的にHCCと診断された117患者137結節を対象とし、二人の読影者が既存の診断アルゴリズム(original LI-RADS)とmodified LI-RADSを用いてカテゴリー分類を行う。さらに多血化群と非多血化群、病理学的分化度のサブグループにおいても比較検討する。【結果】読影者間の一致率はoriginal LI-RADSとmodified LI-RADS algorithms で75.9%、95.6%であった。感度はmodified LI-RADS で有意に高かった(p < 0.001)。サブグループでも、感度は多血化群、非多血化群(p < 0.001、p = 0.008)、高分化、中分化群で有意差が見られたが(p < 0.001)、低分化群では有意差は見られなかった(P = 0.250)。【結語】modified LI-RADSはoriginal LI-RADS と比較して良好な診断能や読影者間の一致率が得られ、HCCの診断に有用と思われた。― 腫瘍 ―S44川 崎 医 学 会 誌
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