医学会誌44-補遺号[S30]
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29ス-1:AMPK活性化剤を用いた遺伝性糖脂質蓄積症に対する新たな治療アプローチ研究代表者:髙井 知子(病態代謝学) クラッベ病は、ミエリン鞘の主要構成脂質であるガラクトシルセラミド(GalCer)を加水分解するライソゾーム酵素、GalCer-β-galactosidase(GALC)の欠損を病因とする遺伝性脱髄疾患である。本疾患では、GALC の基質でありGalCerのリゾ体であるガラクトシルスフィンゴシン(GalSph)が細胞内に異常蓄積し、中枢および末梢神経系のミエリン形成細胞の細胞死を引き起こすとされている。これまでに、血液脳関門を通過する低分子化合物を用いて蓄積基質の合成を抑える「基質抑制療法」がゴーシェ病などいくつかの神経型スフィンゴ脂質蓄積症で効果を上げている。 本研究では、クラッベ病に対する基質抑制療法の開発を目指し、自然発症のGALC欠損クラッベ病モデルマウスであるTwitcherマウスからオリゴデンドロサイトを初代培養し、培養細胞中のGalSph濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。野生型マウスでは、前駆細胞(OPC)、分化誘導3日目(day3)、5日目(day5)いずれにおいても、GalSph は0.1 pmol/μg protein 以下と測定感度以下であった。一方、Twitcherマウスでは、OPC、day 3、day 5と分化の初期から進行性に上昇していた。 Twitcherマウス由来初代培養オリゴデンドロサイトを用いた GalSph測定系が確立できた。経口糖尿病治療薬メトホルミンはAMP-activated protein kinase(AMPK)の活性化を介して、GalCerおよびGalSphを合成するために必須の糖ヌクレオチドUDP-galactose(UDP-Gal)の合成を抑制することから、TwitcherマウスにおけるGalSph蓄積を軽減する可能性がある。今後は、上述の培養実験系へのメトホルミンの添加実験により、GalSph蓄積の減少効果を検証する予定である。S43
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