医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-39:炎症性腸疾患(IBD)及び過敏性腸症候群(IBS)におけるアレルギー疾患の合併と、セリアック病関連抗体価、抗IgG4抗体価及び炎症性サイトカインの検討研究代表者:石井 学(消化管内科学)【背景】炎症性腸疾患(IBD)は遺伝因子、環境因子、過剰免疫などの複数の要因が原因と考えられているが、依然原因不明な疾患である。食物アレルギーも遺伝因子、環境因子、過剰免疫が関わっているが、IBDと食物アレルギーの関連を検討した研究は少ない。本研究では、本邦におけるIBD患者の食物アレルギーの頻度及びサイトカインプロファイルを評価し、病態への関与を検討した。【対象】当院にIBDで通院中の患者、健診受診者のうち消化器症状やアレルギー疾患を除き基礎疾患を有さない健常対照者。【方法】末梢血を採取し、17種の食物抗原を含むImmunoglobulin E multiple antigen stimulation testであるMAST-36とサイトカインプロファイルを評価した。MAST-36の食物抗原に対してクラス2以上を陽性とした。サイトカインプロファイルは、MilliplexⓇ MAP Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel Immunoassayを使用し、29種類のサイトカインを同時に測定した。【結果】対象はIBD 30例(潰瘍性大腸炎15例、クローン病15例)、健常者20例であった。IBD群と健常者群において、年齢、性別、食物アレルギーの頻度に差を認めなかった。サイトカインに関しては、EGF、GCSF、GMCSF、IFN-α2、IL-10、IL-1b、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、MIP1-a、MIP1-b、TNF-αにおいて、IBD群が有意に高値であった。健常群では、食物アレルギー陽性群が陰性群と比較して、サイトカイン値は低い傾向を認め、IL-6及びTNF-αが有意に低値であったが、IBD群では、食物アレルギー陽性群が陰性群と比較して、サイトカイン値は高い傾向を認め、IL-7が有意に高値であった。29基-21:小腸上皮細胞に発現する新規脂肪酸C2水酸化酵素の同定研究代表者:松田 純子(病態代謝学) スフィンゴ糖脂質(GSL)は、細胞膜(脂質二重膜)の外層に存在する膜脂質で、親水性の糖鎖部分と疎水性のセラミド骨格から構成されている。その構造には、組織、細胞、発達段階別に数千種類に及ぶ構造の多様性がある。小腸上皮細胞では、セラミド骨格のスフィンゴシン塩基のC4位と脂肪酸のC2位に1か所ずつ水酸基が付加している通常の組織に比して2つ水酸基が多いセラミド構造のGSLが90%以上を占めている。我々はGSLのスフィンゴシン塩基のC4位の水酸化はDihydroceramide: sphinganine C4-hydroxylase(DES2)が担っていることをノックアウトマウスの解析で明らかにしている。 本研究では、小腸において、GSLの脂肪酸のC2位の水酸化を担う酵素の同定を試みた。まず、脂肪酸のC2位の水酸化酵素として唯一同定されているFatty acid 2-hydroxylase(FA2H)の、マウス消化管における発現変化をqPCR法で検討した。Fa2hは脳、腎臓、食道、胃、大腸には強く発現しているのに対し、小腸には全く発現が認められなかった。Fa2hノックアウトマウス(Fa2h-KO)の消化管におけるGSLの構造解析の結果、Fa2h-KOの小腸では水酸化脂肪酸の構造が欠損せず、野生型と同等に発現していた。 小腸上皮細胞には未知の脂肪酸C2水酸化酵素が存在することが強く示唆された。現在、マウス小腸組織と脳組織のマイクロアレイ法による比較発現解析と、遺伝子発現データーベースを用いたin silico解析の併用により、新規脂肪酸C2水酸化酵素の同定を試みている。S41

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