医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-68: バレット食道におけるバレット腺癌リスクマーカーの検討研究代表者:村尾 高久(消化管内科学)【背景】バレット食道(Barrett esophagus;BE)の中でも3cm 以上のBE(Long Segment Barrett’s Esophagus;LSBE)が3cm に満たないBE(Short Segment Barrett’s Esophagus ;SSBE)と比較して、食道腺癌(esophageal adenocarcinoma;EAC)のハイリスク因子であるとされている。一方でEAC発症のリスクを評価できる感度の高い有用なバイオマーカーを見出されておらず、これらが臨床上の急務となっている。我々は以前に米国人を対象としたケースコントロール研究において、SERPINB7の過剰発現がBEの伸展やEAC発症におけるバイオマーカーとして有用である可能性を報告した。【目的】本研究の目的は日本人BE粘膜のブラッシング検体を用いて、LSBEおよびEAC発症に関連するバイオマーカーを同定することである。【方法】当院の外来患者および入院患者を対象に内視鏡検査を実施し、拡大narrow band imaging(NBI)観察を行った後に、EAC患者の癌の背景BE粘膜(EAC群)と年齢、性別を合致させた対照群からブラッシングを行って検体を採取した。Affymetrix GeneChip HG-U133 Plus 2.0 arrayを用いてマイクロアレイ解析を行い、候補遺伝子の同定解析のために、Real time PCRを実施した。【結果】EAC群13例(LSBE2例を含む)、対照群(LSBE患者17例、SSBE患者54例)を対象とした。3群比較においてSCNN1B発現量はSSBE群でLSBE群およびEAC群と比較して有意に低発現で、SERPINB7はSSBE群でLSBE群と比較して有意に高発現を認めた。コントロール群とEAC群の2群間のBE粘膜の遺伝子発現に有意差を認めなった。【結論】LSBE患者におけるSCNN1Bの発現低下およびSERPINB7の過剰発現が米国人同様、日本人のLSBEにおいても認められた。29基-67:内視鏡下ブラシ法を用いた消化管粘膜マイクロバイオータの解析研究代表者:大澤 元保(消化管内科学)【背景】近年の技術革新により、腸内細菌解析は飛躍的な進歩を遂げている。これらの多くが糞便を用いた研究であるが、腸管内より直接粘膜に付着している細菌叢を検討した臨床研究はほとんどない。【目的】内視鏡下ブラシを用いて腸粘膜に付着している粘膜マイクロバイオータの方法を確立し、その解析を行う。【方法】川崎医科大学附属病院においてポリエチレングリコールを用いた通常前処置での大腸内視鏡検査を行う被験者より腸粘液サンプリングを行った。腸管腔内ブラッシングは、回腸・上行結腸・S状結腸の3か所から粘液を採取した。また検査同日の朝に糞便を採取した。これらのサンプルを16SrRNAシークエンス解析を行い、腸管細菌叢の多様性、菌種構成比、採取される種数、種の豊富さと主観の均等性の評価を行った。総菌体量はqPCR法にて評価を行った。【結果】被験者は7名で平均年齢54歳、男女比は1:6であった。内視鏡所見は全例異常を認めなかった。腸内粘膜細菌叢は、糞便細菌叢と異なっていた。回腸、上行結腸、S状結腸で比較すると腸内細菌叢の菌種構成比は多少の変動が見られた。ブラッシングにより採取された腸内細菌の菌種は3つの部位でほとんど変化しなかった。また多様度指数の数値はほぼ同じで、種の豊富さと種間の均等性が等しいことが分かった。【結論】腸粘膜細菌叢は糞便細菌叢と異なっており、内視鏡下ブラシ法は有効であった。今後、炎症性腸疾患や食物アレルギーなどで腸粘膜細菌叢が関連があるかどうか検討を行っていく予定である。S40川 崎 医 学 会 誌
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