医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-98: 糸球体内皮細胞-上皮細胞連関におけるインフラマソーム活性化制御機構の解明研究代表者:長洲 一(腎臓・高血圧内科学) 申請者らは慢性腎臓病が心血管イベントのリスク因子であるという臨床から得られた知見より糸球体内皮機能障害と糖尿病性腎症進展の関連について検討を続けてきた。一方で多くの基礎研究から糸球体上皮細胞障害が糸球体硬化病変への進展機序として重要であり、近年は上皮細胞におけるInflammasome依存的慢性炎症の重要性が指摘されている。「糸球体内皮細胞におけるeNOS-NO経路は糸球体上皮細胞におけるInflammsome活性化を抑制的に制御する」との作業仮説のもとeNOS欠損マウスにおける上皮細胞障害の機序解明を行った。【方法・結果】使用動物はWT(C57BL/6)及びeNOS欠損マウス(eNOSKO)を用いた。両マウスにストレプトゾトシン(STZ)投与を行い、WT-Con, WT-STZ, eNOSKO-Con, eNOSKO-STZの4群を作成し蓄尿及び糸球体病変の検討を行った。高血糖確認後、4週目の蓄尿ではWT-STZで軽度のアルブミン尿増加を認めたがeNOSKO-STZではさらに著名に増加していた。PAS染色で糸球体病変の観察を行ったところeNOS-STZでのみ4週の時点で硬化糸球体が散見された。Inflammasome活性化の責任細胞を検討するためASCとPodocryxinで2重染色を行ったところ上皮細胞でInflammasome活性化が起こっていることが示された。これらの事実からeNOS-NO経路の破綻が上皮細胞内でのInflammasome活性化を促す可能性が示唆された。Inflammasome活性化の意義を検討するためeNOS-ASC double KOマウス(eNOS-ASC DKO)を作成した。eNOS-ASC-DKOにSTZ誘発糖尿病を発症させたところeNOSKOに比較し有意にアルブミン尿の減少を認めた。【まとめ】以上の結果からeNOS-NO経路の破綻は糖尿病状態における糸球体上皮細胞障害を促進させることが示された。29基-79:線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor: FGF )23によるネフローゼ症候群の治療抵抗性の推察研究代表者:佐々木 環(腎臓・高血圧内科学)【目的】“ネフローゼ症候群におけるFGF23とFEp(リン排泄率)の関連は、治療選択の際、腎機能予後を推測する臨床情報となり得る”との仮説を立て検証した。【リン排泄率と腎機能障害の解析】リン利尿作用を持つFGF23 の測定は、現在保険診療では認められていない。以前、FGF23 動態をネフロン当たりのリン排泄量のFEpを使用し推察した。外来において24時間蓄尿し得た57例から、eGFR低下につれて、①FEp上昇、②血清カルシウム濃度低下、PTH上昇、③リン排泄量低下、④血清リン濃度上昇の経過が推測された。リン濃度とEFpの関係から年間のeGFR低下速度をみると、高リン血症、FEp高値群が早い傾向が観察された(倫理申請 平成27年2月9日に受理 受付番号は2030)。【再燃時に高リン血症を認めたネフローゼ症候群症例】○歳、男性。急激に浮腫を発症しネフローゼ症候群の診断でステロイド療法を開始した。腎生検により微小変化型ネフローゼ症候群と診断した。ステロイド減量中に再燃し、高リン血症、FEp低値、FGF23上昇を認めたが、ステロイド増量により、速やかにFGF23は低下し、リン排泄率上昇し、血清リン濃度は正常化した。【考察と将来の展望】①リン利尿低下と腎機能低下速度が関連を疑わせ、②ネフローゼ症候群では腎機能が正常でありながら、 再燃時にFGF23のリン利尿作用の減弱を認めた。ネフローゼ症候群の入院時FEp(FGF23)とリン濃度から、組織障害度や腎機能低下速度を推測できる可能性がある。S38川 崎 医 学 会 誌
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