医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-11: 新規糖尿病治療薬SGLT2阻害薬が糖尿病病態に及ぼす影響-腎・消化管連関の解明-研究代表者:下田 将司(糖尿病・代謝・内分泌内科学)【背景】Sodium glucose co-transporter 2(SGLT2)阻害薬は尿糖排泄促進により血糖値を改善するとともに体重を減少させる。一方、SGLT2阻害薬投与後に食欲亢進を訴える患者がみられ、これはエネルギー恒常性維持のための防御機構の存在が示唆される。そこで、我々はグルコースの体外排泄調節を担う『腎臓』とグルコースの体内流入調節を担う『消化管』の関係に着目し、SGLT2阻害薬が消化管糖輸送担体SGLT1、GLUT2発現増加を介し糖輸送能を亢進させ、GIPやGLP-1の分泌を増加させることを報告してきた。【目的】SGLT2阻害薬が消化管糖輸送を亢進させる機序を検討する。【方法】肥満2型糖尿病モデルdb/dbマウスをSGLT2阻害薬luseogliflozin投与群と非投与群に群別し、2週間介入後に腎臓におけるエネルギー代謝の変化、肝臓におけるグリコーゲン代謝の変化を検討する。【結果】Western blotにて腎臓でのAMPKリン酸化を比較したが群間差はなく、解糖、β酸化を含むエネルギー代謝に関わる遺伝子の発現量にも群間差はなかった。肝臓1gあたりのグリコーゲン含量は、非投与群に比し投与群で有意に減少し、グリコーゲン合成抑制に関わるGSK3αとGSK3β遺伝子の発現量は投与群で亢進していた。【結語】SGLT2阻害薬投与は腎臓でのエネルギー代謝変化というよりも肝グリコーゲン含量の低下を介し、消化管糖吸収を亢進させている可能性がある。29基-93:In vivo imagingによるSGLT2阻害薬Empagliflozinの糸球体過剰濾過抑制機構の解明研究代表者:近藤 恵(腎臓・高血圧内科学)【背景】SGLT2阻害薬の糖尿病性腎臓病における糸球体過剰濾過是正効果は、尿細管糸球体フィードバック機構(TGF)を介した機序が想定されているが、その詳細な制御機構は不明である。SGLT2阻害薬Empagliflozin(Empa)によるTGFを介した過剰濾過制御機構の解明を目的に実験を行なった。【方法】C57BL/6マウス、糖尿病モデルマウス(Akita)を用いた。AkitaにEmpa(20mg/kg)を4週間投与し、Single Nephron GFR(SNGFR)をin vivo imaging法を用いて評価した。投薬前後2時間の同一ネフロンのSNGFRの変化、糸球体輸入細動脈径の変化も同様に評価した。マクラデンサからの血管作動物質(血管拡張因子、収縮因子)の阻害薬を使用し、Empaの糸球体過剰濾過是正効果に及ぼす影響を検討した。血管作動物質の尿中代謝産物の測定を行った。【結果】Akitaは糸球体過剰濾過の状態であり、Empaにより有意に抑制された。投薬後数時間の同一糸球体の評価においてもEmpaは過剰濾過を有意に抑制した。輸入細動脈径も優位に縮小していた。マクラデンサからの血管収縮因子であるAdenosineの尿中排泄は、Empa投与により有意に上昇した。また選択的Adenosine A1受容体拮抗薬は、Empaの過剰濾過是正効果を著しく減弱させた。【結語】糖尿病性腎臓病に対するEmpaの糸球体過剰濾過是正効果はTGFを介した機序であり、マクラデンサからの収縮因子による制御が中心的な役割を果たしていると考えられた。S36川 崎 医 学 会 誌
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