医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-31:血管内皮PDK1の糖代謝及び膵β細胞に及ぼす病態生理学的役割の解明 研究代表者:小畑 淳史(糖尿病・代謝・内分泌学)【背景】Phosphoinositide dependent protein kinase1(PDK1)はPI3Kの下流にあり、インスリンシグナルにおいて重要な役割を果たす。我々は世界に先駆けて、血管内皮特異的PDK1欠損マウス(VEPDK1KOマウス)を作製した。通常食3ヶ月飼育で、随時インスリン値が有意に低値であったことに着眼し、「血管内皮PDK1は膵β細胞機能に重要な役割を果たす」という仮説を立てた。【目的】血管内皮PDK1の膵β細胞に及ぼす役割を解明する。【方法】通常食3ヶ月飼育したVEPDK1KOマウスとコントロール(flox/flox)マウスを比較検討した。【結果】VEPDK1KOマウスは腹腔内糖負荷試験でコントロールと比較して血糖値に違いがないものの、インスリン値は有意に低値であった。経口糖負荷試験ではKOマウスで15分値血糖は有意に上昇していた。Ex-4で前処置したところ、腹腔内糖負荷試験ではKOマウスで有意に血糖は高値であった。グルコース応答性インスリン分泌はKOマウスで減弱しており、Ex-4添加によりその差はより明瞭化した。単離膵島ではインスリン遺伝子やその転写因子など膵β細胞機能において重要な遺伝子発現がKOマウスで有意に低下しており、hif1α及びその下流遺伝子はKOマウスで有意に上昇していた。さらにKOマウスで有意にPimonidazole陽性β細胞が増加していた。単離膵島において、ER stress、炎症性サイトカインの遺伝子発現も亢進していた。【結語】血管内皮PDK1は、膵島における血流維持にとても重要で、膵島を虚血から保護し、ER stressや炎症の軽減を介して膵β細胞の機能・量の維持に極めて重要な役割を果たす。29基-25:膵β細胞保護効果を有する新規糖尿病治療薬の検索研究代表者:金藤 秀明(糖尿病・代謝・内分泌内科学) 膵β細胞はグルコース応答性にインスリンを生合成、分泌する細胞であるが、高血糖が持続するとβ細胞は疲弊して、インスリン生合成および分泌障害は低下する。この現象は高血糖毒性として広く知られている。このインスリンの発現を制御しているのは転写因子MafAやPDX-1であるが、申請者らは、高血糖毒性にはMafAおよびPDX-1発現の低下が深く関与すること、また高血糖を是正すればこうした因子の発現が回復することなどを報告している。今回の研究においては、各種小分子化合物ライブラリーを用いて、高血糖毒性で低下するMafAやPDX-1の発現を直接増加させる薬剤や因子を網羅的に検索しており、いくつかの因子が同定されている。膵β細胞株にて変化を認めた薬剤に関しては単離膵島においても同じ結果が得られるかを順次確認する。 さらに申請者らは、現在糖尿病領域で注目されているSGLT2阻害薬(尿糖排泄の増加を介して血糖降下作用を有する)によって、高血糖毒性による膵β細胞障害が回避できることを報告しているが、今回の検討では、どのようなタイミングでSGLT2阻害薬を用いれば、よりその効果が高まるのか、MafA, PDX-1などの発現が増加するのかを詳細に検討している。その結果、SGLT2阻害薬は2型糖尿病の病態進行期に比べて早期の方がかなり大きい効果が得られることが明らかとなっている。S34川 崎 医 学 会 誌
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