医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-71: 炎症性骨破壊におけるアンジオテンシンⅡの役割の解明研究代表者:守田 吉孝(リウマチ・膠原病学)【目的】アンジオテンシンII(Ang II)は、その受容体(AT1R、AT2R)を介した血圧調節作用以外に、骨代謝に影響することが報告された。今回、関節炎を自然発症するヒトTNFトランスジェニック(hTNF-tg)マウスを用いて、炎症性骨破壊におけるAng IIの影響、またその受容体経路について検討した。【方法】12週齢野生型(WT)マウス、hTNF-tg マウスの皮下に浸透圧ポンプを埋め込み、Ang II を4週間持続投与した。また、上記Ang II投与マウスにAT1R blocker、AT2R blockerを4週間、連日腹腔投与した。別途AT2R agonistを持続投与する群も設けた。【結果】Ang IIの持続投与は、関節炎の程度には影響を及ぼさなかった。しかし、マイクロCT・組織学的解析ではAng II投与により距骨の骨びらんが有意に増強した。Ang II投与hTNF-tgマウスにAT1R blockerおよびAT2R blockerを投与したところ、AT2R blocker投与時のみAng IIの骨破壊増強効果が消失した。また、AT2R agonist持続投与はAng II投与と同等に骨破壊が増強した。【結語】Ang II持続投与は関節炎の程度には影響を及ぼさず、骨破壊を増強させた。一方、AT2R blockerでこの増強作用が消失したことからAng IIの骨破壊増強効果はAT2Rを介する可能性がある。29基-80:停留精巣に対して水素を用いた造精機能変化の検討研究代表者:藤井 智浩(泌尿器科学)【目的】停留精巣は精巣が陰嚢まで下降せず、高温環境下にある腹腔内または鼠径部に存在することで造精機能障害を来すとされている。高温環境では精巣内の酸化ストレスによりアポトーシスを誘導し、組織障害を来すとされている。ラット停留精巣モデルを用いて、酸化ストレス環境下での活性酸素除去作用のある水素水の作用を検討した。【対象と方法】8週齢、Sprague-Dawleyラットを用いて、陰嚢内精巣を腹腔内に固定し停留精巣モデルを作成した。周術期に水素水投与群および非投与群に分けて管理を行った。術後一定期間飼育した後、精巣における免疫組織学的、生化学的変化を検討した。また、精巣上体尾部から精子を回収し、精子運動解析装置(DITECTⓇ)を用いて精子所見を検討した。【結果】精液所見では両群ともに濃度、運動率の継時的な低下を認めたが、両群間を比較すると水素水非投与群でより低下傾向であった。ELISA法、免疫染色法では水素水非投与群でROSの上昇を認め(P<0.04)、水素水投与群と比較し有意な上昇を認めた。精細胞のTUNEL染色では飼育期間が長期なほどTUNEL陽性細胞の有意な増加を認め、水素水投与群では非投与群と比較してTUNEL陽性細胞の減少を認めた。【結論】停留精巣モデルではROSを介してアポトーシスを誘導していると考えられた。水素水はROSを抑えることで造精機能を保護する可能性がある。S30川 崎 医 学 会 誌

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