医学会誌44-補遺号[S30]
32/94

29基-8:造影頸部超音波検査による脳梗塞発症予後予測研究代表者:植村 順一(脳卒中医学)【背景】我々は症候性頸動脈軽度狭窄病変患者に対して、頸部造影超音波検査(Carotid enhanced ultrasonography; CEUS)とBlack-Blood MRI(BB-MRI)T1高信号より頸動脈プラーク診断を行い、脳梗塞再発のリスクが高いと診断した場合は積極的にCEAの適応を検討している。【方法】2015年8月から2018年4月まで症候性頸動脈狭窄病変で頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy: CEA)を施行された6例全例で頸部造影エコーとBlack-Blood MRI(BB-MRI)法によるプラーク性状評価を施行した。本研究は単アームの前向き観察研究であり、本学倫理委員会の承認を得て実施している(2246-2)。また対象者からは文書で同意を得ている。摘出された病変を病理で確認し、プラーク性状評価と病理所見を比較した。【結果】病変部のプラーク性状評価は、 CEUSでは3例(50%)で造影され、5例(83%)で潰瘍を認めた。5例(83%)で造影または潰瘍を描出した。BB-MRIでは、全例(100%)でT1高信号だった。病変部の病理所見は、全例でFibrouscapの菲薄化、Fibrouscapの断裂が確認できた。BB-MRIとCEUSの組み合わせにより、全例(100%)でFibrouscapの菲薄化、Fibrouscapの断裂がみられる不安定プラークを予測できた。【結論】頸動脈軽度狭窄病変に対して、BB-MRIT1高信号とCEUSにより、プラーク性状評価することが治療方針決定に有用であることが示唆された。29基-49:Voxel-Based Specific Regional System for Alzheimer’s Disease(VSRAD)を用いた全脳照射後の脳萎縮の定量評価研究代表者:釋舍 竜司(放射線腫瘍学)【背景】全脳照射後の晩期有害事象である認知機能の低下は、海馬の萎縮が原因と推測されている。【目的】MRIを用いて、全脳照射後に海馬に萎縮が見られるか検討する。また、副次目的として照射後の認知機能を評価する。【対象】2000年1月1日~2016年1月17日に当院で小細胞肺がんの予防的全脳照射を受けた21患者中、本研究に参加の同意が得られた2例。【方法】MRI画像をVSRADⓇで解析し、海馬の「萎縮度」(値が大きいほど萎縮が強い)と「萎縮比」(値が大きいほど海馬に選択的な萎縮がある)を算出した。全脳照射(25Gy)前後で萎縮度と萎縮比を比較し、照射後に海馬の選択的な萎縮が進行するかを検討した。認知機能の評価には長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いた。【結果】症例①では、照射前→3ヶ月後の萎縮度1.12→1.18、萎縮比2.13→5.20で、海馬に選択的な萎縮が見られた。症例②では、照射10ヵ月後→16ヶ月後→21ヶ月後の萎縮度1.10→1.07→1.00、萎縮比1.27 →1.00→0.71で、萎縮の進行はなかった。症例①と症例②において、HDS-Rでは認知機能の低下は認めなかった。【考察】2症例の結果に乖離が見られたが、認知機能低下は照射後2年以上経過して見られることが多いため、さらに長期間の経過観察が必要である。引き続き症例を集積し、照射後の海馬の萎縮と認知機能の低下の相関を検討する予定である。S28川 崎 医 学 会 誌

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る