医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-77:脊髄損傷モデルラットに対する骨格筋電気刺激法の効果とその機序の解明研究代表者:宮本 修(生理学2)【目的】近年、脊損後の運動が中枢神経の再生を起こし運動機能を改善したという報告がなされているが、その機序は明らかではない。本研究では、運動時の筋収縮が脊髄でのBDNF産生を誘発することを予想し、それが運動機能の回復に関与する可能性を検討した。【方法】10週齢雄ラットを脊髄損傷のみ群(SCI)、脊髄損傷+電気刺激群(SCI+ES)、椎弓切除のみ群(CONT)の3群に分け、脊損はラット脊髄T8へ20gの重りを25mmの高さから落下することで作製した。脊損後、前脛骨筋に皮膚電極を装着し10mA, 2Hzの刺激強度で筋収縮を誘発した。損傷当日から左右10分/日、4週間刺激を行った。運動機能評価としてBBBスコア、傾斜台、ロータロッド、組織学的評価として脊髄の空洞形成やTUNEL染色を行った。さらに、BDNFやGAP43(再生軸索のマーカー)の免疫染色、ウェスタンブロッティング、ELISAを行った。【結果と考察】損傷4週間後のSCI+ES群において、運動機能が有意に改善し組織学的にも空洞体積の縮小とGAP43陽性軸索の増加が見られた。また、損傷1週間後のSCI+ES群において損傷中心部のTUNEL陽性細胞の減少とBDNF陽性ニューロンの増加および腰髄部のBDNF量の増加が起こった。脊損後の電気刺激による骨格筋収縮により脊髄BDNF産生が誘発され細胞保護と運動機能回復に寄与したことが示唆された。29基-63: 頸動脈ステント留置術後のステント内血栓症評価における造影超音波検査の有用性研究代表者:八木田 佳樹(脳卒中医学) 頸動脈狭窄症による脳梗塞発症予防の目的で行われる頸動脈ステント留置術(CAS)の合併症としてステント内血栓症がある。ステント内血栓症は早期発見することで、脳梗塞などの合併症を予防しうる。本研究では、通常の超音波検査に比較して、造影超音波検査(CEUS)がステント内血栓症の早期診断に有用か検討することを目的としている。 本研究は単アームの前向き観察研究であり、本学倫理委員会の承認を得て実施している(2246-2)。また対象者からは文書で同意を得ている。2015年4月から2018年3月までの期間にCASを行った連続21例において、CEUSを実施している。ステント内に血栓形成を疑う造影欠損部位を認めた例ではCEUSを再検する。通常の超音波検査に比し、ステント内血栓症の検出率、血栓サイズの測定値を比較検討した。 現在も症例集積中であるが、CEUSの有用性を示唆する典型例を、既に数例経験している。代表的な2例に関して報告する。2例とも急性期に症状の進行・動揺を認めたため、発症同日にCASを施行している。初回CEUSでステント内に明瞭な造影欠損部位を認め、ステント内血栓症と診断したが、通常の頸動脈超音波検査では診断できなかった。抗凝固療法の追加など抗血栓療法の強化を行い、再検時には2例とも血栓の消失を確認している。 CEUSを用いて、ステント内血栓症を早期に診断することにより、CASの治療成績を向上させる可能性がある。S27

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