医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-9:聴覚経回路における音声情報のコーディング様式の解明研究代表者:藤本 久貴(眼科学1) 聴覚神経回路において探索を行い、電位依存性カリウムチャンネルが聴神経核や視床などの聴覚領域特異的に発現していることを見出した。その発現は局在しており、他領域では殆ど発現していないことを免疫染色およびin situ hybridizationを用いて確認した。さらに神経細胞内で、後シナプス領域に局在していることを確認した。 視床においては、下位ニューロンからの興奮性の入力の受け手のシナプスに電位依存性カリウムチャンネルが発現していた。さらにそのシナプスは同じく下位ニューロンから来る今度は抑制性のシナプスと三重シナプスを形成していることを見出した。三重シナプスは小脳のほかは存在があまり知られておらず、特徴的な知見と考える。また、抑制性入力と興奮性入力が両方とも同じ下位神経核から連絡を受けており、特異な神経回路構造をとっていることを明らかにした。 また、視床においてはほぼ全ての神経細胞がこの電位依存性カリウムを発現しており、その細胞表面マーカーも明らかにした。 以上の知見は電位依存性カリウムチャンネルが聴覚系独特の生理的特性に合わせて発現していることを示唆している。電位依存性カリウムチャンネルは電気生理学的に細胞応答を早める方向に修飾すると予想され、時間的半減期の短い聴覚応答に適応した結果であると推察される。29基-111:嗅覚系神経回路に対する遠心性調節についての三次元微細構造解析研究代表者:樋田 一徳(解剖学) 嗅覚系一次中枢嗅球における嗅覚情報処理機構について、単一ニューロン標識と三次元構造解析を行い、嗅球神経回路の調節機構の解明が本研究の目的である。 縫線核からのセロトニン 5HTニューロン(Suzukiら2015)、対角帯水平脚 HDB からのアセチルコリンAchニューロン(Hamamotoら2017)について論文発表してきたが、今回、青斑核 LC からのノルアドレナリン NA ニューロンについて、以下のような結果を得た。 DBH-Creマウスにアデノ関連ウイルスを脳定位的に LCへ注入し、NAニューロンを蛍光標識した。その後ニューロルシダで単一NAニューロンのトレースを行い、中脳網様体から嗅球への投射全経路を明らかにした。嗅球内では、細い線維が、特に顆粒細層、次いで外網状層に多く、糸球体層と僧帽細胞層は比較的少ない。突起は所々数珠構造を示し、その存在頻度は顆粒細胞層と外網状層に多かった。この数珠構造を抗 Norepinephrine Transporter抗体を用いた免疫電顕で解析するとシナプス結合を形成していた。シナプス後側の膜電子密度 PSDが典型的な非対称性ほど顕著でなく、多様性に富んでいる。 NAニューロンの嗅球内分布は5HT、Achニューロンとは異なり、他の脳領域からの嗅球へのより精巧な遠心性調節が推測される。現在論文投稿準備中で、従来の知見を基に更に解析を進めている。S23
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