医学会誌44-補遺号[S30]
25/94

29基-90:胎児循環における物質輸送特性の再評価と胎児心血管系制御システムの解明研究代表者:毛利 聡(生理学1) 胎生は哺乳類に共通の一過的発育機構であり、胎児発達のために出生後とは大きく異なる環境を提供している。我々はこれまでに、心筋細胞が出生直後に分裂能を失うメカニズムとして肺呼吸開始による高濃度酸素曝露が重要な情報となっていることを報告した(Hashimoto K. et al., 2017)。本研究では、酸素環境に加えて物質輸送環境の心筋細胞分化への影響を検討するために、脂肪酸代謝に関わるペルオキシソーム活性や代謝物質の輸送体発現について検討した。胎児および新生児、成体ラット・マウス心臓にてペルオキシソーム膜のABC輸送体であるPMP70(Abcd3)の発現を比較したところ、出生直後一過的に増加し成体では再び活性が低下していた。マウス胎児から採取した培養心筋細胞を低酸素下(3%)で培養した後に高酸素(20%)に曝露したところ、PMP70発現の増加が認められた。また、脂肪酸や乳酸、ピルビン酸を輸送するモノカルボン酸輸送体アイソフォームMCT1-4の発現について出生前後の心臓および異なる酸素濃度下での培養胎児心筋細胞を用いて比較したところ、MCT4のみが出生後・酸素曝露に著明に低下していることが明らかになった。これらの結果から、周産期の酸素環境変化は細胞周期停止のシグナルとしての機能以外にも出生後に増大するエネルギー需要に適応するための代謝の変換にも関与している可能性が示された。29基-13:双胎間輸血症候群の受血児心疾患の予知を目的とした超音波・生化学マーカーの有用性について研究代表者:村田 晋(産婦人科学1)【緒言】双胎間輸血症候群(以下TTTS)は胎児鏡下レーザー凝固術(以下FLP)により予後改善が期待できる。しかし、FLP後、受血児に特殊な心疾患を発症することがある。このような心疾患の予知を目的として、FLPを施行例の超音波・生化学マーカーの測定を行った。【方法】TTTSに対しFLPを行った症例に対し、同意を得た上で手術前後の受血児・供血児の超音波計測と、手術時の受血児羊水から心不全マーカーであるNT-proBNP、心筋トロポニンT計測を行った。研究は川崎医科大学・同附属病院倫理委員会で承認済みである。【結果】2017年10月以降、TTTSに対しFLP予定の妊婦7例から同意を得て、胎児の超音波計測と受血児羊水から心不全マーカーの測定を行った。手術時TTTS stageはstage1が2例、stage2が3例、stage3が2例であり、stage4の症例は無かった。全例でFLPを施行し、手術時週数中央値20.1週(16~27週)、手術前受血児tei-indexは左室中央値0.47、右室0.47(tei-indexは4例のみ計測可)であった。NT-proBNPは中央値3611pg/ml(841-6210)、心筋トロポニンTは中央値0.038ng/ml(0.01-0.069)であった。【結論】症例数が7例と少なく、統計学的な解析に至っていない。今後、さらなる追加検討が必要である。S21

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る