医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-84: プラズモン共鳴を示す貴金属担持チタン酸ナノシートの基礎的研究研究代表者:吉岡 大輔(自然科学) 液相合成したチタン酸ナノシート(TNS)分散液に、酸化金、酸化銀など貴金属の酸化物を懸濁し、紫外線を照射することで、貴金属担持TNSを作製した。金担持TNS(Au/TNS)、銀担持TNS(Ag/TNS)分散液は530nm付近、430nm付近に吸収を持ち、それぞれ赤、黄に呈色していた。Au/TNSの530nm、Ag/TNSの430nm付近の吸収は、ナノサイズの金、銀に特有の表面プラズモン共鳴(SPR)による吸収であった。同じく貴金属である白金、パラジウム、銅を担持したTNSでは、SPRによる吸収は見られなかった。 Au/TNSのSPR吸収波長に近い励起波長をもつ蛍光色素ローダミン6G(R6G)の溶液を用いて、Au/TNS分散液のSPRによる蛍光発光増強効果を検討した。しかし、Au/TNSの添加量が増えるに従い、R6Gの発光強度が減少した。同様の関係を持つAg/TNSとルシファーイエローでも、同様であった。分散液中では、Au/TNSとR6Gを近接させることが難しく、増強効果の主たる要因であるAu/TNS近傍で発生する電場がR6Gには届かなかった。協奏的な効果を期待した530nm付近の光に対するAu/TNSの吸収とR6Gの励起が競争的になり、結果、R6Gの励起の妨害、発光強度の減少を引き起こした。29基-29:行動解析によるインフルエンザウイルスのヒトへの感染性獲得機構の解明研究代表者:堺 立也(微生物学) インフルエンザウイルスはヘマグルチニンと受容体の結合の交換により細胞表面を二次元的に運動することができる。この運動(感染行動)がウイルスの細胞への感染効率を上げること、感染に最適な運動の様式(行動パターン)は宿主により異なることから、行動パターンはウイルス感染の宿主特異性(特に人への感染性)を評価する新たな指標となる可能性がある。本研究では、行動パターンを指標としたウイルスの人への感染性の評価のため、人や水鳥を宿主とする各種のインフルエンザウイルスを対象に行動パターンの解析と分類を行った。インフルエンザウイルスはA型H1N1亜型とH3N2亜型を用いた。受容体として人(α2,6)型シアロ糖鎖あるいは鳥(α2,3)型シアロ糖鎖を結合したガラス表面を作製し、この表面でのウイルスの運動を反射干渉顕微鏡により可視化した。H3N2亜型ウイルスでは、人ウイルスに比べ鳥ウイルスは、受容体密度の高い領域でしか運動できない。それに対しH1N1亜型ウイルスでは、鳥ウイルスは人ウイルスと同様の受容体密度の表面で運動した。インフルエンザウイルスはもともと水鳥のウイルスが人や豚などに感染するようになったもので、人への感染性の獲得は中間宿主として豚を経由することで起きるとされている。しかし行動解析の結果は、すでに水鳥のウイルスの中に、人への感染に適した行動をとるウイルスが存在することを示唆している。― セッション3 ―S17
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