医学会誌43-補遺号
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研究課題名:ニワトリ胚心臓のコネクチン弾性構造決定研究発表者:安田 ひな(平成28年度医学研究への扉) 鳥類と哺乳類の成体心臓は、2心房2心室で高い心機能や発達した冠循環を有し、硬く伸びにくい点で共通している。一方、両生類の心臓は単心室で冠循環もなく伸びやすい。哺乳類に関して は、胎児期心臓は両生類同様に伸びやすく、個体発生は系統発生を繰り返すということを反映しているが、鳥類の心臓の伸びやすさが孵化前後で変化するかは良く分かっていない。心臓の伸びやすさは弾性タンパク質コネクチンの構造と相関があるため、本研究ではニワトリ12日胚のコネクチン分子配列を決定し、孵化前心臓の伸びやすさを推定した。まず、Masson trichrome染色で心臓形態を調べると、12日胚の心臓では既に2心房2心室で緻密な心筋組織と冠循環が観察された。免疫蛍光染色で細胞・タンパクレベルの解析を行ったところ、12日胚の心筋細胞の断面積は成体の1/3程度であったが、サルコメアの長さはほとんど変わらなかった。SDS-PAGEとWestern blotを行ったところ、12日胚の心臓にも成体と同程度の大きさのコネクチンが存在した。RT-PCRでコネクチンⅠ帯弾性領域の配列を決定したところ、12日胚と成体のコネクチン配列はほとんど変わらなかった。以上のことから、鳥類の心臓の伸びやすさは、哺乳類と異なり孵化前後で変化しないことが推測された。この違いは、鳥類と哺乳類の冠循環や心筋組織の発達度合の差を反映している可能性がある。 S90川 崎 医 学 会 誌

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