医学会誌43-補遺号
90/102

研究課題名:動脈硬化抑制に関わる核内受容体の標的遺伝子の探索研究代表者:松岡 浩史(福山大学 薬学部薬学科)【背景】本邦の脳血管疾患による死亡者数は第4位であるが、寝たきりのような要介護者になる原因としては第1位を占める。したがって、高齢化社会を迎えた現代において、脳血管疾患を改善する新たな薬物療法の開発は急務である。【内容】核内受容体はステロイドホルモン等の脂溶性リガンドにより活性化し、標的遺伝子DNAへ結合する転写調節因子として働く。ヒトでは50種余りが同定されており、遺伝子欠失マウスにより病態との関連性が解析されている。RORα核内受容体を欠失すると、高脂肪食下による飼育において脂質代謝異常及び過剰な炎症反応を惹き起こし、アテローム性動脈硬化を発症する。すなわ ち、RORαにより転写調節を受ける標的遺伝子群の働きにより、動脈硬化発症が抑制されていると言える。そこで我々は、動脈硬化発症の抑制に作用する因子を同定するために、RORα核内受容体の標的遺伝子群の探索を行った。【成果】ヒトゲノム上のRORα応答配列をスクリーニングし、RORα標的遺伝子群を独自に見出し た。その中に脳血管内皮細胞間の接着に関わる遺伝子や血中糖濃度の調節に関わる遺伝子が含まれることを報告してきた。その他、酸化LDLの蓄積によるマクロファージ泡沫化の抑制に関わる遺伝子も見つけており、これら標的遺伝子の発現制御を利用した新たな治療法開発も視野に入れている。【連絡先】matsuoka@fukuyama-u.ac.jp研究課題名:カルノシン酸摂取による老齢疾患予防効果について研究代表者:柴田 紗知(福山大学 生命工学部生命栄養科学科)【目的】ハーブの一種ローズマリーの主な機能成分であるカルノシン酸は、生体内酸化ストレス防御機能活性化作用や血管新生抑制作用が報告されている。我々は、カルノシン酸の機能として、神経細胞保護効果を見出している。加えて、神経細胞保護の作用機構として、情報伝達系タンパク質のリン酸化促進作用や転写因子FoxO3aの活性化作用、オートファジー活性の関与を明らかにしている。これらの効果は加齢に伴う疾病のリスクを低下させることが期待できる。そこで、カルノシン酸摂取が加齢に伴う各種疾患に対して予防的に作用するか検討するため、老化促進マウスへの長期間経口投与実験を行った。【方法】老化促進マウス(senescence accelerated mice; SAM)のうち、早期学習記憶障害モデル動物として確立されているSAMP8を用いて検討した。12ヶ月に亘ってカルノシン酸溶液(50μM)を自由摂取させた。対照には蒸留水を自由摂取させた。飼育期間中には行動科学試験や運動機能測定を行った。そして、投与終了後に各種臓器を回収し組織染色等を行い、カルノシン酸摂取による老齢疾患予防効果について検討を行った。【結果】いくつかの行動科学試験において、カルノシン酸摂取による脳機能保護効果が示された。さらに、カルノシン酸摂取によりFoxO3aの活性化を介して肝臓及び腎臓保護効果を示すことが明らかになった。その一方で運動機能について検討した結果、握力や筋肉量において両群に差は見られなかった。S86川 崎 医 学 会 誌

元のページ  ../index.html#90

このブックを見る