医学会誌43-補遺号
73/102

28基-65: ヒト感染症の起因微生物(肺炎マイコプラズマ)の二色性リアルタイムPCR法を用いたマクロライド耐性迅速検査の臨床応用研究代表者:宮田 一平(小児科学)【背景】近年、市中肺炎の主要な起炎菌の1つである肺炎マイコプラズマにおいて、第一選択治療薬であるマクロライド系抗菌薬に対する耐性を有する割合が増加していることが明らかになっている。本菌におけるマクロライド耐性は専ら23S rRNAのドメインV中の隣接する2つのアデニン残基(大腸菌における2058,2059番の塩基に相当;肺炎マイコプラズマにおいては2063,2064番)の一方に変異が入ることによって賦与されることが知られている。同菌におけるマクロライド系抗菌薬に対する耐性を迅速に弁別することが可能になれば、より適切な治療介入が期待される。これは、厚労省が進めている薬剤耐性(AMR)対策アクションプランにも寄与するものと考えられる。加えて、耐性菌の蔓延状況の疫学情報の収集もより用意になることが期待される。【方法】宮田らが発明した検出法(特許第6108407号)を用い、当科で実施中の肺炎マイコプラズマの疫学研究において収集された菌株・臨床検体を検討する。【進捗】肺炎マイコプラズマ標準株(FH株)由来のgDNAを鋳型として、PCR法によって23S rDNAの一部をクローニングし、2058,2059番の2塩基における全ての組み合わせ(16種類)を有する陽性対照標品の調製を終えた。【今後の予定と展望】耐性変異の有無とin vitroでの薬剤耐性が既に明らかな臨床分離株由来のgDNAにおいて本法の結果が一致することを確認する。さらには、現状ではダイ・ターミネーター法によるシークエンシングが出来ない菌数が希薄な臨床検体における有用性の評価を進める。 さらには、臨床的にマクロライド系抗菌薬への耐性が問題となるHelicobacter pylori等、他の病原体における有用性の検討へも発展させたい。28基-60:QFT-IT(QuantiFERON TB Gold in–tube)を用いての結核感染活動性の評価 研究代表者:小橋 吉博(呼吸器内科学)【目的】過去の研究において、IFN-γおよび関連ケモカインが活動性結核に対して感度、特異度に優れていた一方で、IL-2やTNF-αは活動性結核に対する感度、特異度は不良で、むしろ潜在性結核や陳旧性結核の症例の中に高値をとる症例がみられていた。今回は、症例数を増やしてQFT上清中に含まれるIFN-γや関連ケモカイン、IL-2やTNF-α等を測定し、活動性結核、潜在性結核、陳旧性結核の鑑別診断に有用か検討した。【対象と方法】対象は、活動性結核36例、陳旧性結核23例、潜在性結核9例とした。これらに対して、IFN-γおよび関連ケモカイン、IL-2、TNF-α等を測定した。また、活動性結核10例および潜在性結核3例には、治療前後で経時的変化も測定した。【結果】IFN-γおよび関連ケモカインは前回と同様に活動性結核の症例において、最も高値をとっていたが、TNF-αは活動性結核の症例が高いものの差はなくなり、IL-2は潜在性結核の症例で活動性結核の症例とほぼ同等の数値を呈していた。活動性結核や潜在性結核の同一症例での経時的変化に関しては、治療によりIFN-γおよび関連ケモカインは有意に低下していたもののIL-2およびTNF-αは治療前後でほぼ同等の数値を呈していた。【考察】IL-2やTNF-αが潜在性結核や治癒後の結核症例においても上昇した状態を維持していた が、活動性結核との鑑別に有意差までは見いだせなかった。ただ、IFN-γとの比を比較した場合に は、潜在性および治癒後の結核症例との鑑別に有用な可能性が示唆された。S69

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る