医学会誌43-補遺号
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28ス-1: HTLV-1感染が免疫老化制御機構に及ぼす影響とその病因的意義の解明研究代表者:瀬島 寛恵(微生物学) 近年、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)の原因遺伝子であるがん抑制遺伝子men1の転写産物Meninが、免疫老化に伴うアレルギー疾患や自己免疫疾患の発症にかかわる転写抑制因子であるBach2を標的として制御すること、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の転写制御因子HBZがMeninの機能を抑制することが相次いで報告された。そこで、Menin-Bach2経路によるCD4陽性T細胞の機能や細胞老化の制御にHTLV-1が及ぼす影響と、疾患発症への関連の解明を目的に研究を行った。 HTLV-1感染T細胞株におけるMeninおよびBach2の発現量を核酸レベル・蛋白レベルで検討したところ、Meninの発現が保たれる一方でBach2の発現は認められなかった。さらに、免疫沈降法を用いてMeninがHTLV-1の転写制御因子であるTaxおよびHBZの双方と相互作用することを見出した。また、HTLV-1感染者の末梢血単核球におけるmenin遺伝子の発現がHTLV-1感染細胞数と逆相関することを見出した。これらの結果は、HTLV-1が標的細胞であるCD4陽性T細胞に感染してMenin-Bach2経路を抑制することが「免疫老化」によるT細胞機能異常をもたらし、HTLV-1関連疾患(ATL、HAM)発症に関与する可能性を示唆しており、現在さらなる解析を進めている。28基-91: 単純ヘルペスウイルス感染による水疱形成に表皮角化細胞の細胞骨格、細胞接着分子の変動が及ぼす影響研究代表者:山本 剛伸(皮膚科学) 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の特徴として皮膚に小水疱を形成する。組織学的特徴として、皮膚表皮内に棘融解細胞や多核巨細胞が出現する。これらを形成するために細胞内骨格の変化や、細胞膜の融合をきたす必要があるが、この機序は不明であるため、HSV感染に伴う表皮角化細胞の細胞骨格、細胞接着分子の変化を解析した。 培養ケラチノサイト(KC)にHSVを感染させ、ウイルス侵入・複製、細胞間骨格・細胞間接着分子の変化を経時的に光学・共焦点顕微鏡で確認し、ウエスタンブロットで蛋白量の変化を評価 した。 その結果、①HSVは高分化KCより低分化KCに侵入しやすいが、ウイルス複製能は高分化KCのほうが高い。②低分化KCにHSVを感染させると細胞は孤立性の円形を呈し、巨細胞はみられなかった。HSV感染高分化KCは、多核巨細胞の形成が多数認められた。③細胞骨格を形成する蛋白(ケラチン、アクチン、チューブリン)や細胞間接着分子(E-カドヘリン、デスモグレイン、Nectin-1など)の発現量はHSV感染によりほとんど不変であった。 以上より、ウイルス感染は基底細胞付近の低分化KCに感染し、cell to cell spreadにより高分化KCに感染拡大した後、効率的なウイルス複製のために多核巨細胞を形成する。また、HSV感染により細胞内発現分布に変化が生じ、細胞形態に変形が生じると推察された。S66川 崎 医 学 会 誌

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