医学会誌43-補遺号
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28基-16:シャペロンネットワーク動態メカニズムの解明に基づく新規抗ウイルス治療戦略の構築研究代表者:齊藤 峰輝(微生物学) ウイルス性疾患の新規診断法・治療法開発に資するシーズの発見のため、感染現象に影響を与えることが報告されているシャペロンネットワーク動態の普遍的メカニズムの解明を目指した。 分子シャペロンタンパク質の遺伝子発現制御は転写因子Heat Shock Factor 1(HSF1)の活性に依存していることから、細胞にストレスを与えずにHSF1活性を可逆的に制御可能なプロテオチューナー法(膜透過性リガンドShield-1とヒトFKBP12タンパク質変異体[FKBP12mut]の機能的結合を応用したシステム)の確立を試みた。全長529アミノ酸(aa)からなるヒトHSF1の185~203aa領域を内部欠損させたドミナントアクティブ体、C末端379~529aa領域を欠損させたドミナントネガティブ体をそれぞれFKBP12mutに融合し、動物細胞発現用のプラスミドを構築した。ヒトT細胞白血病株であるJurkat細胞にプラスミドを導入し、FKBPmut-HSF1融合タンパク質の発現を確認した。Jurkat細胞を用いてFKBPmut-HSF1融合タンパク質を発現する細胞株の樹立を試みたが、細胞クローンを得ることはできなかった。現在、HSF1の活性化状態および不活性化状態を維持した細胞にウイルスを感染させ、感染細胞の増殖に与える分子シャペロンの機能的意義について解析を続けている。28基-40:インフルエンザ発症における宿主免疫応答および交叉防御を担う宿主細胞の解析研究代表者:後川 潤(微生物学)【背景・目的】インフルエンザウイルス感染において、抗原性が異なる(抗体で中和できない)ウイルスに対する交叉防御能の獲得には細胞性免疫のはたらきが重要であることが報告されているが、詳細は明らかではない。本研究では交叉防御能の形成機序解明の端緒として、A型インフルエンザ発症時の宿主免疫細胞について、生体内における分布とフェノタイプおよび交叉防御能の付与効果を検討した。【方法】インフルエンザを発症したマウスの脾臓(SPL)細胞とリンパ節(LN)細胞を回収し、交叉反応性や防御能付与効果についてELISPOT、FACS解析および動物実験等で検討した。【結果・考察】抗原性の異なるウイルスに特異的に反応する免疫細胞の出現時期がSPL細胞とLN細胞とで異なり、感染後期(回復期)のSPL細胞と感染初期のLN細胞中には交叉防御能を付与できる細胞が存在し、CD8+T細胞が交叉防御を担う責任細胞である可能性が示唆された。さらに、LN細胞中にのみCD4+CD8+T細胞の出現が認められ、特に感染初期には細胞傷害活性の指標であるCRTAM(CD355)陽性のCD4+CD8+T細胞の出現頻度が高い傾向が認められた。今後は交叉防御の形成機序解明の詳細な検討に加えて、インフルエンザ発症および交叉防御におけるCRTAM+CD4+CD8+T細胞の機能について検討する。S65

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