医学会誌43-補遺号
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28基-70:3倍体クローン条虫株を用いたマンソン裂頭条虫由来代謝制御因子の統合的機能解析研究代表者:沖野 哲也(微生物学) ヒトにマンソン孤虫症を引き起こすマンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)の第1中間宿主(ケンミジンコ)の長期飼育法を確立し、実験的第2中間宿主(マウス)、終宿主(イヌ)を用いて、生活環を実験室内で完成させた。マンソン裂頭条虫には、2倍体(2n=18)と3倍体(3n=27)が存在する。単為生殖する3倍体成虫の子孫は全てクローンになることに着目し、完成させた系を用いて、岡山県産の3倍体成虫を起源とする遺伝的に均一な3倍体クローン条虫株(Kawasaki triploid strain Kt株)の樹立法を確立した(Okino et al.2017)。Kt株のミトコンドリアCOX1の一部の塩基配列443bpを決定し、分子系統樹を作製した結果、Kt株が、オーストラリア・中国・韓国のマンソン裂頭条虫と98%相同であり、東アジア・オセアニアの代表的なものであることが示唆された。ただし、最近の韓国の研究(Eom et al. 2015, Jeon et al. 2015, 2016 )により、Kt株がS. decipiensに近縁であり、今後、種名変更の可能性も示唆された。マンソン裂頭条虫の幼虫は、成長ホルモン様因子・免疫抑制因子などの生理活性物質を分泌して、実験的宿主の代謝系・免疫系に影響を及ぼすことが知られており、Kt株は、マンソン裂頭条虫の感染とマンソン孤虫症の研究に有益である。28基-68:ムンプスにおける再感染と特異細胞性免疫との関連について研究代表者:寺田 喜平(小児科学)【背景】ムンプスは自然感染後再罹患やワクチン接種後ブレイクスルーが存在する。またワクチン接種後抗体陽性率とワクチン効果の間に大きな差があるため、血清抗体だけではワクチン効果の推定は不十分と思われる。再罹患やブレイクスルーの基礎的原因を探るため、細胞性免疫(CMI)を測定した。【方法】IgG抗体(-)17名、(±)14名、(+)23名、計54名を対象とし、(-)と(±)群はムンプスワクチンを接種し、接種前後にCMIと抗体価を測定した。CMIはinterferon-γ (IFN) release assayで、抗体はEIA法で測定した。【結果】抗体(‐)、(±)、(+)群でCMI陽性者は、それぞれ8/17 名(47.1%)、 9/14 名(64.3%)、 19/23 名(82.6%)であった。抗体(‐)群の7名、抗体(±)群の10名はワクチン接種歴あるいは自然感染歴があり、それらの4/7名と8/10名はCMI(±)以上であった。ワクチン接種後は抗体価およびIFN値は有意に増加したが、どちらも陽性となった割合は抗体(‐)群で7/17(41.2%)、抗体(±)群で13/14(92.9%)であった。自然感染群(接種歴なしで抗体あるいはCMI陽性)とワクチン接種群を比較すると、IgG抗体価は有意に高値であったが、IFN値は有意差がなかった。【結論】ワクチン接種、たとえ自然感染であっても抗体陰性があり、抗体陽性でもCMI陰性があった。自然感染やワクチン接種後でも抗体やCMIの両方が必ずしも陽性とならないことが判明 し、再罹患やブレイクスルーの原因の一つと思われた。また抗体(±)では1回の接種で90%以上が両方とも陽性となった。S64川 崎 医 学 会 誌
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