医学会誌43-補遺号
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28基-104: 助触媒担持によるランタノイド担持チタン酸ナノシートの蛍光発光の高効率化研究代表者:吉岡 大輔(自然科学) 液相合成したチタン酸ナノシート(TNS)の水分散液に種々の金属酸化物を懸濁し、UV照射することで、助触媒として金属種を担持したTNS(co-cat/TNS)を作製した。TNSの光誘起酸化還元反応に対する助触媒の影響を評価するため、UV照射時のco-cat/TNS分散液の酸化還元電位 (ORP)を測定した。また、M/TNSにさらにランタノイドを担持し(Ln/co-cat/TNS)、Ln/TNSとLn/co-cat/TNSの蛍光発光挙動の比較を行った。助触媒として、Mn、Fe、Co、Cu、Ni、Pt、Pd、Nb、Ta、Wの10種の遷移金属を用い、ランタノイドにはSm、Eu、Tb、Dyを用いた。 助触媒の違いにより、TNSへのUV照射時のORP変化が異なった。TNSおよび多くのco-cat/TNSがUV照射時に酸化的雰囲気に進行する傾向がみられるのに対し、Cu/TNSは還元的雰囲気へと進行した。また、Fe/-、Mn/-、Pt/TNSではORPの変化が見られなかった。 助触媒担持の蛍光強度への影響もまた、金属種の違いにより異なった。Cu、Pt、Pd、Nbを担持した系では概ね蛍光強度の増加が見られ、Mn、Fe、Niを担持した系では蛍光強度の減少傾向が見られた。また、ランタノイドの違いによっても異なり、Euの蛍光発光に対しては助触媒担持が蛍光強度の減少をもたらし、Tbに対しては助触媒担持による蛍光強度の増強が見られた。多くの系 で、助触媒担持によりTNSのORPは変化し、Ln/TNSの発光強度が改善した。しかし、TNS上の担持サイトが助触媒により既に占有されてしまったため、Euを担持した系では発光効率の減少がおきたと考えられる。28基-63:ナノシート化合物の毒性影響と免疫機能影響 研究代表者:西村 泰光(衛生学)【緒言】チタン酸ナノシート(TNS)は2Dナノ材料であり産業利用が期待されているが、近年、ナノ材料のナノ毒性が危惧されている。我々はTNS曝露下培養時にヒト末梢血単核球(PBMC)にカスパーゼ依存性アポトーシスが見られ、単球では空砲形成を伴うアポトーシスが観察され、エンドソーム機能へのTNS曝露影響が示唆されることを報告した。他方、我々は石綿曝露の免疫毒性影響としてNK細胞上NKp46発現量低下を明らかにしてきた。そこで、PBMCより単離したNK細胞を用いてTNS曝露下培養時の影響を調べた。【材料と方法】PBMCまたは磁気ビーズを用いて単離したNK細胞をTNS曝露下IL-2添加培地中で7日間培養した。蛍光標識抗体とフローサイトメーターを用いてNK細胞上のNKp46発現量を測定した。【結果】PBMC培養時にはCD3-CD56+NK細胞上のNKp46発現量はTNS曝露濃度依存的な低下が確認された。他方、単離NK細胞では、培養後の細胞数はTNS曝露濃度依存的に減少したが、細胞表面NKp46発現量は逆に増加を示した。【考察】PBMC培養時のNK細胞表面NKp46発現量はTNS曝露により減少した。この減少はPBMC中の単球へTNS曝露毒性影響を反映していると考えられる。一方、単離NK細胞へのTNS曝露影響はPBMC培養時と異なっていたことから、TNS曝露が非貪食系細胞にも毒性影響を示し、その様態は貪食系細胞とは異なることが示唆される。S62川 崎 医 学 会 誌

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