医学会誌43-補遺号
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28基-71: 先天性赤血球膜異常症と赤血球EMA結合能低下の病態解明に向けて研究代表者:中西 秀和(血液内科学)【緒言】遺伝性球状赤血球症(HS)は赤血球膜蛋白異常(spectrin、ankyrin、band 3、P4.2)に起因する疾患であるが、従来の赤血球膜蛋白検査(SDS-PAGE)では必ずしも病因遺伝子変異に該当する膜蛋白異常を表現しておらず、約30%の症例で膜蛋白異常を同定できない。我々はHSの新たな検査法として、赤血球膜EMA結合能をフローサイトメトリーで評価する方法に注目し、同検査の有用性を検討した。【対象】HS120例(spectrin単独欠損14例、ankyrin関連欠損9例、band 3関連欠損23例、P4.2部分欠損25例、膜蛋白欠損未検出群43例)、P4.2完全欠損症6例、HE25例(P4.1欠損8例、spectrin欠損10例、膜蛋白欠損未検出群7例)【結果】MCF(% of control)値は、spectrin欠損79.8±7.5%、ankyrin欠損73.9±3.3%、band 3欠損73.8±5.8%、P4.2部分欠損76.6±7.5%、膜蛋白欠損未検出群74.0±7.6%、P4.2完全欠損85.7±2.6%といずれも低値であった。これに対して、HEでは、spectrin欠損79.7±7.4%、P4.1欠損95.9±2.8%、膜蛋白欠損未検出群96.3±3.6%であり、spectrin欠損で低値を示した。【考察】EMA結合能はHS全病型において低下しており、HSにおける診断法として有用である。HEにおけるEMA結合能の低下は、spectrin欠損型に特異的と推察されるが、既報はなく、現在EMA結合能の低下したHE症例に対してβ-spectrin遺伝子解析を実施中である。28基-27:赤血球膜蛋白異常症における溶血性貧血の程度を規定する因子の検索 研究代表者:末盛 晋一郎(検査診断学(病態解析)) 赤血球膜蛋白異常症は、赤血球膜蛋白異常により溶血をきたすことを特徴とする疾患群である。赤血球膜蛋白は赤血球形態および変形能の維持に寄与しており、膜蛋白に異常が生じると膜構造が破綻し、赤血球形態変化をきたす。形態変化をきたした赤血球は変形能が低下するために脾臓に滞留する。その結果、脾臓内のマクロファージに通常の寿命よりも早期に貪食され、赤血球破壊の亢進、即ち溶血を呈する。脾臓での溶血量が骨髄における赤血球造血量を上回った場合には貧血を呈する(溶血性貧血)。これまでの解析の結果、共通の膜蛋白異常を有する赤血球膜蛋白異常症症例間において溶血性貧血の程度に差があることが判明している。この現象は膜蛋白異常の相違では説明がつかず、溶血性貧血の程度を左右する未知の機序が存在すると考えられるが、その機序については未解明である。そこで本研究では溶血性貧血の程度を規定する機序について脾臓でのマクロファージによる赤血球貪食に着目し、マクロファージが赤血球貪食の際に標的分子とすると考えられるCD47の赤血球における発現量をflow cytometryを用いて解析した。今回、これまでに得られた解析結果を考察と共に報告する。― 環境と生体反応 ―S60川 崎 医 学 会 誌

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