医学会誌43-補遺号
62/102

28基-100:骨髄増殖性腫瘍における病因遺伝子変異解析と病態の解明研究代表者:近藤 敏範(血液内科学)【背景】Bcr-abl陰性の骨髄増殖性腫瘍(MPN)の原因遺伝子としてはJAK2-V617F遺伝子変異とCALR遺伝子変異が知られているが、遺伝子変異の違いによる臨床像の相違については未だ明らかになっていないことが多い。我々はこれまでの検討で、JAK2-V617F変異患者では好中球アルカリ フォスファターゼスコア(NAP score)が高値となるが、CALR変異患者では低値となることを明らかにした。我々はNAP scoreをより客観的に評価するため、flow cytometry (FCM)を用いて好中球膜表面のNAPを測定し、NAP scoreとの関連性について検討した。【方法】患者末梢血好中球を、FITC標識抗アルカリフォスタファーゼ抗体とPE標識抗CD11b抗体で二重染色し、測定したFITCのMFIをsNAPと定義した。【結果】19例(JAK2変異例14例、CALR変異例5例)を検討した結果、NAP scoreとsNAPの間には有意な中等度の相関関係がみられた(P<0.008,ρ=0.591)。MFIの平均値はJAK2変異群で有意に高値であった(P<0.001)。【考察】NAP scoreとsNAPには有意な中等度の相関がみられた。CALR変異群のsNAPはJAK2変異群に比して有意に低く、遺伝子変異の違いがsNAPに影響していることがFCMでも明らかにされた。28基-102: 骨髄増殖性腫瘍の遺伝子解析と変異遺伝子の機能解析研究代表者:北中 明(検査診断学(病態解析)) 骨髄増殖性腫瘍(MPN)の遺伝子解析と変異遺伝子の機能解析として、臨床検体の解析、モデル実験系を用いた変異CALRの機能解析を実施した。 臨床検体を用いた検討では、65例のMPN(PV 12例、ET 40例、MF 11例、その他 2例)に対して遺伝子解析を行い、全症例の54%にJAK2V617F変異が、29%にCALR変異が認められた。CALR変異は、ETの38% 、MFの36%に検出された。 変異CALRの機能解析として、トロンボポエチン(TPO)受容体MPLを発現し、巨核球系の形質を有する細胞株にヒトと相同的なCALR変異のノックインを行い、2種類のトランスフォーマントを得た。CALR変異の導入によって、CMK11-5細胞では、細胞増殖、TPO感受性の亢進が認めら れ、F36P-MPLではサイトカイン依存性が消失した。また、変異CALRによるJAK-STAT系の活性化には、MPLの発現が必要であり、他のサイトカイン受容体であるG-CSFやEPOの受容体が共発現してもJAK-STAT系を活性化できないことが明らかとなった。また、レトロウイルスによってCALR変異体を導入したマウス骨髄細胞を成体マウスに移植したところ、ヒトETの病態を再現するモデルが作成できた。JAK2阻害剤ルキソリチニブの投与は、当該モデルマウスが示すMPN病態の制御に有効であった。S58川 崎 医 学 会 誌

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る