医学会誌43-補遺号
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28基-99:がん性疼痛で使用したオピオイドによる便秘に対するルビプロストンの有用性研究代表者:本多 宣裕(総合内科学4)【背景・目的】がん性疼痛に対してオピオイドを使用することで誘発される便秘は、通常は刺激性下剤や塩類下剤で対応可能であるが、難治性の場合にはそれらと作用機序が異なるルビプロストンの有用性が報告されている。しかし化学療法施行中にはその有害事象により便秘のコントロールが更に難しくなることがあり、ルビプロストン追加の意義について後方視的に解析した。【方法】2015年3月から2016年2月までに当科に入院して化学療法を施行中に、がん性疼痛に対してオピオイド内服による便秘にルビプロストンを投与した症例を対象とした。便秘の定義は日本内科学会の「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とし、評価には排便回数と食事量の変化を用いた。【結果】対象は7例で全て男性であり、年齢中央値は65歳(範囲:44~79歳)、原疾患は肺癌3例/膵癌2例/直腸癌1例/リンパ腫1例、PSの中央値は2(範囲:1~3)であった。全例がルビプロストン使用前の便秘に対して、1種類以上の緩下剤を使用していた。オピオイドは全てオキシコドン内服であり、その使用前には1日~3日に1度の排便(中央値1日)であった。オキシコドン使用により便秘となったが、ルビプロストン使用後には6例で毎日排便が認められ、6例で食事摂取量の増加が認められた。【考察】ルビプロストンは有用と考えられ、前向き試験で評価すべきと考えられた。28基-2: 甲状腺癌発生・進展に関与する因子の検討研究代表者:田中 克浩(乳腺甲状腺外科学)【はじめに】甲状腺ホルモンは代謝亢進により、体重増加や減少を引き起こす点で肥満やるい痩に関与する多くの因子に左右し、左右されている。肥満に関与する因子として、以前からレプチンが注目されている。甲状腺乳頭癌患者では健常者よりも有意に血清レプチン濃度が高いと報告されている(Rehem RA, et al. World J Surg, 38: 2621-2627, 2014)。しかし、本来leptinは摂食抑制の作用を持っており、BMIの高値と甲状腺癌発生の危険率が増加することとは矛盾することになる。この点を解明する目的に甲状腺癌におけるレプチンの発現を検討した。【対象と方法】手術治療を施行した42例の甲状腺癌原発巣(乳頭癌38例、低分化癌4例)のレプチンおよびレプチンレセプターの発現をreal-time PCR法を用いて検討した。コントロール遺伝子とのCt値の比率を算出し、臨床データーとの比較を行った。【結果】レプチンおよびレプチン受容体はすべての検体に発現がみられた。BMIと腫瘍のレプチンCt値率およびレプチン受容体Ct値率には有意な相関関係が確認され、それぞれR=0.39、p<0.01、R=0.42、p<0.005であった。年齢、性別、腫瘍径、リンパ節転移の有無、被膜外浸潤の有無、生存期間とはいずれも有意な関係は見られなかった。【考察】甲状腺癌内のレプチンとレプチン受容体発現量はBMIと正の有意な相関関係がみられた が、予想と反していた。甲状腺癌内レプチン濃度の役割とBMIに影響するレプチンの役割は別の経路が活性化している可能性が示唆された。S56川 崎 医 学 会 誌

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