医学会誌43-補遺号
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28基-9: 胃癌患者に対する化学療法時のカルニチン濃度の変化と栄養状態および自覚症状との関連に関する研究研究代表者:松本 英男(消化器外科学)【背景】カルニチンは脂肪酸の代謝に重要な役割を担うビタミン様物質であり、低栄養とカルニチン濃度は関連があるとされている。抗癌剤投与で尿細管でのカルニチンの再吸収と組織移行を促すカルニチントランスポーターOCTN2(organic cation transporter novel)の発現量が低下し、カルニチンの血中濃度が低下すると報告されている。【目的】胃癌患者でシスプラチンを含む抗癌剤投与時の、血清カルニチン濃度の変化と栄養状態の変化を測定しカルニチンを予防的に投与した際の栄養状態の変化を予防できることを検証する。【方法】化学療法施行前にカルニチン濃度、血清生化学検査(TP、Alb、リンパ球、ChoE、 T.Chol)とbioelectrical impedance 法(InBody)を用いて体成分分析を測定した。サイクル毎に同様の測定を行った。【結果】 TS-1+CDDPの化学療法を行った2例に対して測定を行った(C群)。その後2例にカルニチンの予防的投与を行った(A群)。C群では総カルニチン値は前値、2回開始前、3回開始前は54.5±13.7μmol/L、46.7±13.5μmol/L、41.4±14.8μmol/Lと有意に低下した(p=0.00349)。またTP、ChEも有意に(p=0.0218,0.0418)低下した。InBodyの計測では、骨格筋量、体脂肪率、内臓脂肪量、体重、BMIが優位に低下し、自覚症状については水分摂取状況と味覚の変化に有意な変化を認めた。A群では、統計的有意差はないが、すべてのパラメータで減少傾向を認めなかった。【考察】繰り返す化学療法で血中カルニチン濃度は低下し、これとともに栄養状態は悪化した。カルニチンを予防的投与することでこれを防げる可能性が示唆された。28基-64:HSP90を標的とした薬剤耐性難治性膵がん治療研究代表者:山村 真弘(臨床腫瘍学) 膵がんはがんの王様と言われ、5年生存率は10%以下であり難治癌の代表格である。現在でも手術が唯一の根治治療であるが、4分の3は再発する。膵癌はゲムシタビンを中心とした併用療法、nab-paclitaxel、FOLFIRINOX療法、TS-1などが使用可能となった今でも生存期間は11か月にすぎない。近年、全ゲノム・シークエンス解析の結果から、Big4と呼ばれる4つの遺伝子変異 (KRAS、CDKN2A/p16、TP53、SMAD/DPC4)以外に、約15%程度に現在FDAで認可をうけた治療薬の標的を含む膵がんが含まれている。これらの分子がheat shock protein90(HSP90)のクライアント蛋白でもあることに注目した。本研究では、HSP90阻害を行うことで膵がんの増殖に関わる複数の遺伝子(タンパク質)を受容体、細胞内の各段階で同時に抑制できること、新たな治療薬になることを証明した。膵癌細胞にHSP90阻害薬を作用させると、抗癌剤の感受性に関わらずゲムシタビン(GEM)よりはるかに低濃度で増殖抑制、アポトーシスを誘導した。シグナル解析では、同時に複数の受容体や細胞内分子のシグナルおよび蛋白発現を抑制した。また、細胞の遊走能の抑制、上皮間葉転換の阻害もみられた。本研究結果は、HSP90阻害が抗がん剤の感受性に関係なく、著明な抗腫瘍効果かつ転移抑制効果もあることが明らかにしたもので、難治性膵癌治療のブレークスルーとなりえる。S55
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