医学会誌43-補遺号
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28基-105:非小細胞肺癌におけるNK細胞活性化リガンドULBP1-6発現制御機構の解明研究代表者:沖田 理貴(呼吸器外科学)【背景】これまでにNK細胞活性化受容体NKG2Dに対するリガンドMICA/Bの非小細胞肺癌(NSCLC)での過剰発現は予後良好因子であり、その発現がEGFRシグナルで制御されることを報告したが、同じくNKG2DリガンドであるULBPについては報告がない。抗腫瘍免疫は活性化と不活化のバランスで成り立っており、T細胞、NK細胞の不活化にかかわるPD-L1の発現も興味 深い。【方法】当科で根治手術を施行された91例のNSCLC患者切除標本を用いて、免疫染色によりULBP1-6発現を解析し、臨床病理学的因子との関連について検討を行った。また、NSCLC細胞株を用いて、EGFRシグナルがULBP発現量に与える影響についてフローサイトメトリー法を用いて解析した。合わせて、H27年度プロジェクト研究から継続してPD-L1発現についても同様の手法で解析を行った。【結果】ULBP1,2/5/6,3,4過剰発現は、それぞれ16.5,46.2,22.0,71.4%であった。臨床病理学的因子との関連はULBP2/5/6過剰発現とFDG高集積、腺癌、分化度が、ULBP4過剰発現と腺癌との関連が、それぞれ認められた。予後との関連についてはULBP1,2/5/6,3,4いずれも発現量と無再発生存期間、全生存期間との間に関連は認められなかった。PD-L1発現は昨年の本学術集会で予後不良因子でありEGFR発現量と正相関することを報告したが、新たにHER2発現量とは負の相関があることを見出した。【結論】NSCLCにおいてNKG2Dリガンド(MICA/B,ULBP1-6)のうちMICA/Bのみが予後予測因子であることが明らかとなった。またPD-L1発現制御においてEGFR、HER2シグナルの役割は異なることも明らかとなった。28基-10:肺癌局所でGalectin-9/TIM-3経路による抗腫瘍免疫の抑制機序の解明研究代表者:大植 祥弘(呼吸器内科学)【背景】肺癌でも抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体をはじめとする抗体免疫療法の道が開かれたが、その効果は未だ不十分である。【方法】肺腺癌患者の新鮮組織検体と末梢血を用いて、免疫チェックポイント分子の発現をフローサイトメトリー法で、腫瘍組織におけるそれらのリガンド発現を免疫染色法で検討した。予後との検討では肺腺癌120例の組織マイクロアレイを用いた。【結果】腫瘍浸潤リンパ球における、免疫チェックポイント分子の発現を検討した結果、末梢血と比較し、PD-1+リンパ球、TIM-3+リンパ球の割合が有意に多かった。またPD-1+TIM-3+CD8 T細胞はCD27及びKi-67の発現が維持されていたが、PD-1-TIM-3+CD8 T細胞では、CD27およびKi-67の発現が低下していた。一方で、Annexin VはTIM-3+CD8 T細胞で強く発現していた。 TIM-3+の抗原特異的T細胞クローンにリコンビナントGalectin-9蛋白を添加するとGalectin-9の濃度依存性にT細胞はアポトーシスに陥った。アポトーシスは抗Galectin-9抗体および抗TIM-3抗体で阻止された。 これらの結果をもとに、肺癌組織検体を用いて、①XAGE1発現の有無に加え、②PD-L1、③Galectin-9の多寡を指標に予後との関連を検討した。①-③因子の予後判別関数は、肺腺癌患者の予後を明確に判別でき、PD-L1は予後良好因子として、Galectin-9とXAGE1発現は予後不良因子であった。判別関数は、病理学的病期、組織の悪性度と独立した予後因子(HR:0.40、P=0.01)であった。【結論】肺がん局所では、腫瘍から放出されるGalectin-9によってT細胞はアポトーシスに陥るた め、TIM-3/Galectin-9経路を遮断する治療法の開発が重要である。S50川 崎 医 学 会 誌
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