医学会誌43-補遺号
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28基-28: マイオスタチン遺伝子改変マウスにおけるアゾキシメタン誘発大腸腫瘍の発生研究代表者:松本 啓志(消化管内科学)【背景】大腸癌は、現在本邦において罹患数がもっとも多い癌であり、その予防法開発は国民健康上、重要な問題である。大腸癌の促進因子として肥満、特に内臓脂肪型肥満が、抑制因子として身体活動が、疫学的研究から指摘されているが、その分子生物学的理由についてはよくわかっていない。近年、骨格筋は収縮して関節を動かす運動器としての役割以外にも、ホルモン様生理活性物質マイオカインが注目されている。その中でも、マイオスタチンはTGF-βファミリーの分子で、筋肉量の調節のネガティブレギュレーターとして働くことが報告されている。現在までにマイオカイン、マイオスタチン阻害剤の肥満関連大腸腫瘍の発生抑制効果を検討された報告は、国内外でもいまだない。【方法】マイオスタチン遺伝子改変マウス(BDF1/MSTNpro)に長期脂肪食摂取とアゾキシメタン10mg/kg、腹腔内1回投与して、大腸腫瘍発生を誘発した。AOM投与後、4週ごとに採血、採便およびCT撮影を行い、40週後に大腸腫瘍の発生を確認した。【結果】40週マウスの体重はコントロール群(雄53.2±2.1g、雌46.1±1.6g)と比較してマイオスタチン遺伝子改変マウスは雄50.5±13.6g、雌37.6±0.7gと減少していた。大腸腫瘍の発生は、コントロール(BDF1)群で平均21.7±9.6個と比較して、マイオスタチンドミナントネガティブ群で平均 1.3±1.3と著明に大腸腫瘍の発生が少なかった。また、雄雌別々に検討を行うと雄コントロール(BDF1)群で平均28.8±0.7と比較してマイオスタチンドミナントネガティブ群で平均2.0±1.4、雌コントロール(BDF1)群で平均15.0±9.8と比較してマイオスタチンドミナントネガティブ群では平均0.5±0.7と雄に対する影響が強かった。ただし本研究は検討引数が少ないため数を増やして検討する継続検討予定である。現在、採血、採便、CT検査による体格測定の解析を行っている。【結論】マイオスタチン阻害はマウス大腸腫瘍抑制効果が認められた。現在、そのメカニズムについてさらに検討を進めている。28基-7:扁平上皮癌特異的癌関連遺伝子DKK3による腫瘍制御 研究代表者:片瀬 直樹(分子生物学) 本研究では頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)で特異的に発現する癌関連遺伝子のDKK3について解析を行った。これまでに、(1)HNSCC由来細胞でDKK3を過剰発現させると腫瘍の増殖、浸潤 性、遊走性およびnude mouse移植時の腫瘍径が有意に増加すること、(2)逆にDKK3をノックダウンするとこれらが全て有意に低下することを明らかにした。本研究では、DKK3を介した腫瘍の悪性度増加のメカニズムを明らかにするため、western blottingによりシグナル分子のリン酸化の状態を解析し、その阻害によりDKK3過剰発現の効果をrescueできるかを検討した。その結果、DKK3を過剰発現させたHNSCC細胞では、Akt(S473)およびc-Jun(Ser63)のリン酸化が増加することが示された。そこで、Aktのリン酸化を抑制する低分子化合物LY294002をDKK3過剰発現細胞に作用させたところ、細胞の増殖、浸潤性、遊走性の全てが有意に低下した。ここから、DKK3はHNSCC特異的に、Aktのリン酸化を介してHNSCC細胞の悪性度増加に寄与していることが強く示唆された。本研究の結果はDKK3をターゲットとしたHNSCC制御に向けた重要な基礎データであり、英文誌Oncol Res.(IF:3.954)に受理された。― 腫瘍 ―S47
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