医学会誌43-補遺号
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28基-36: 糖尿病性腎症の病態形成におけるXanthine oxidase活性化の関与の解明研究代表者:城所 研吾(腎臓・高血圧内科学)【背景・目的】糖尿病性腎症(DN)の発症・進展に内皮障害及び酸化ストレス・NO減少(ROS/NO不均衡)が関与することを証明してきた(JASN2013)。DN腎組織ではXanthine oxidase(XO)活性が亢進しており、XOがROS産生を介して病態形成へ関与することが想定されている。DNの病態形成におけるXO活性化の関与を検討した。【方法】10週齢雄性AkitaマウスにTopiroxostat (3mg/kg/day;Akita+Top群)、Febuxostat (1mg/kg/day;Akita+Feb群)、Vehicle(Akita+Veh群)を4週間経口投与し、野生型(WT群)を含む4群でアルブミン尿、糸球体組織変化等を検討した。また、2光子レーザー顕微鏡と蛍光標識アルブミンを用いたin vivo imaging法を活用して糸球体透過性変化を解析した。【結果】血清尿酸値は全群間で有意差は認めなかった。WT群と比べAkita群では血清XO活性・腎組織XOR活性の上昇を認め、薬剤群で抑制が認められた。またAkita群ではWT群に比し、アルブミン尿増加、メサンギウム拡大、糸球体Collagen IV沈着増加、糸球体酸化ストレス亢進(ニトロチロシン染色)、糸球体内皮障害(レクチン染色)を認め、いずれも薬剤群で改善された。In vivo imagingではAkita群で糸球体透過性の亢進を認め、薬剤群で改善を認めた。【結論】XO活性化がDN病態形成に関与しており、XO阻害薬は尿酸非依存性に糸球体内皮機能を保持し糸球体透過性を改善させ、腎保護効果を発揮した。28基-38:糖尿病性腎症における糸球体内皮-上皮細胞連関とインフラマソーム活性化の意義研究代表者:長洲 一(腎臓・高血圧内科学) 糖尿病性腎症の治療開発のため多くの研究がなされてきたが十分な成果が上がっていない。我々は慢性腎臓病の進展における糸球体内皮機能障害と糖尿病性腎症進展の関連について検討を続けてきた。一方で多くの基礎研究から糸球体上皮細胞障害が糸球体硬化病変への進展機序として重要であり、近年は上皮細胞におけるInflammasome依存的慢性炎症の重要性が指摘されている。以上より「正常状態ではNOにより糸球体上皮細胞内のInflammsomeは抑制的に制御され、eNOS-NO経路破綻を来すとInflammsomeが活性化され糸球体上皮細胞障害が惹起される。」との仮説を立てeNOS欠損マウスを用いて実験を行った。方法・結果 使用動物はC57BL/6でWT及びeNOS欠損マウス(eNOSKO)を用いた。両マウスにストレプトゾトシン(STZ)の投与を行い、WT-Con、WT-STZ、eNOSKO-Con、eNOSKO-STZの4群を作成。高血糖確認後、4週ではWT-STZで軽度のアルブミン尿増加を認めたがeNOSKO-STZではさらに増加していた。以上のことから、eNOSKO-STZでは糸球体過剰ろ過が早期から起こることがわかった。また、PAS染色で糸球体病変の観察を行ったところeNOS-STZでのみ4週の時点で硬化糸球体が散見された。Inflammasome の評価を行うため単離糸球体を行いNLRP3関連遺伝子発現を検討した。興味深いことにeNOS-STZでのみこれらの遺伝子発現上昇を認めた。Inflammasome活性化の責任細胞を検討するためASCとPodocryxinで2重染色を行ったところ上皮細胞でInflammasome活性化が起こっていることが示された。 以上の結果からeNOS-NO経路の破綻は糖尿病状態における糸球体上皮細胞障害を促進させることがわかった。またその機序としてNOによるInflammasome抑制作用が重要であることが示唆された。S44川 崎 医 学 会 誌

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