医学会誌43-補遺号
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28基-84:インクレチン関連薬が膵β細胞GLP-1受容体発現に及ぼす影響の検討研究代表者:木村 友彦(糖尿病・代謝・内分泌内科学)【目的】一般的に大量のリガンドに長期曝露されるとそのレセプターは低下する。GLP-1受容体作動薬Dulaglutide(D)長期投与が、膵β細胞GLP-1受容体発現等に及ぼす影響を検討した。【方法】肥満2型糖尿病モデルdb/dbマウスをD群、 Control(C)群に群別し、 17週間介入した。 コントロールにはdb/mマウスを用いた。【結果】db/dbのD群では摂餌量が低下し、血糖値は有意に抑制された。体重やインスリン値は介入前期にはD群で低値だったが、介入後期には逆転し、これはβ細胞保護効果の影響と考えられ た。db/dbマウスのGLP-1受容体発現はC群で、7週齢コントロールマウスに比べて有意に低下していたが、D群では糖毒性の軽減からむしろ増加した。薬剤の代謝への影響がほぼないdb/mでは7週齢マウスに比し、C群もD群も同程度の発現量であった。db/dbのD群では膵β細胞比率・重 量、Ki67陽性β細胞比率は有意に高値であり、TUNEL陽性β細胞率は有意に低値であった。膵ラ氏島遺伝子発現もD群では、インスリン生合成・分泌関連遺伝子発現が亢進し、酸化・小胞体ストレス、炎症、線維化、アポトーシス促進遺伝子発現を抑制させた。【考察】db/dbへのDulaglutide長期投与は、持続的な膵β細胞保護効果を発揮した。またGLP-1受容体発現のdown-regulationは認めなかった。28基-101:血管内皮PDK1の糖代謝及び膵β細胞に及ぼす病態生理学的役割の解明研究代表者:小畑 淳史(糖尿病・代謝・内分泌内科学) Phosphoinositide-dependent protein kinase 1 (PDK1)は、insulin receptor-PI3 kinaseの下流にあり、血管内皮細胞の増殖や生体での血管拡張作用を調節している。血管内皮細胞特異的PDK1欠損マウスは、通常食3ヶ月負荷時で随時血糖値がコントロールマウスと同等にも関わらず、インスリン値が低値であったことから、「血管内皮PDK1は膵β細胞機能維持に重要な役割を果たす」のではないかと仮説を立てた。実際にipGTTでは血糖値には全く差がないのにも関わらず、KOマウスで有意にインスリン値は低下していた。また、OGTTでは15分値で有意にKOマウスの血糖は上昇し、インスリン値も低値であった。免疫染色の結果、膵β細胞量はKOマウスで有意に低下しており、アポトーシスは亢進、増殖は低下していた。さらに、血圧は同等であるにも関わらず、KOマウスでは膵血流の低下、膵島におけるCD31陽性面積は有意に低下していた。単離した膵島のグルコース応答性インスリン分泌はKOマウスで有意に低下し、インスリン含量も有意に低値であった。また、単離膵島を用いた潅流実験では、インスリン分泌は第Ⅰ相、第Ⅱ相ともにKOマウスで低下していた。単離膵島においてインスリン遺伝子やその転写因子(Ins1,Ins2,MafA,PDX-1)、インクレチン受容体など膵β細胞機能において重要な遺伝子発現がKO マウスで有意に低下しており、ERストレスに関与するBip,CHOP,sXBP1などの発現はKOマウスで有意に増加していた。このように血管内皮PDK1は虚血、ER stress等を介して膵β細胞機能維持に重要な役割を果たすことが判明した。S41

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