医学会誌43-補遺号
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28基-55:過敏性腸症候群および潰瘍性大腸炎の病態の解析と治療の検討研究代表者:塩谷 昭子(消化管内科学)【背景】過敏性腸症候群(IBS)と食物アレルギーの関連を指摘した研究も報告されているが、サイトカインプロファイルを検討した研究は少なく、本邦からの報告はない。今回我々は、本邦におけるIBS患者における食物アレルギーの頻度及びサイトカインプロファイルを評価し、病態への関与を検討した。【対象と方法】対象は、下痢型IBS患者および健常対照者。末梢血を採取し、17種の食物抗原を含むImmunoglobulin E multiple antigen stimulation test (IgE MAST)であるMAST-36とサイトカインプロファイルを評価した。MAST-36の食物抗原に対してクラス2以上を陽性とした。サイトカインプロファイルは、MilliplexⓇ MAP Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel Immunoassayを使用し測定した。【結果】対象はIBS-D 37例、健常者32例の計69例であった。IBS-D群と健常者群において、食物アレルギーの頻度(18.8% vs. 24.3%)には差を認めなかった。サイトカインに関しては、EGF、GMCSF、IL1b、IL-8、IP-10、MIP1-a、MIP1-b、TNF-αにおいて、IBS-D群が有意に高値であった。両群ともに、食物アレルギー陽性群では食物アレルギー陰性群と比較して、サイトカイン値は低い傾向を認めたが、健常者群においてIL-6及びTNF-αが有意に低値で、IBS-D群では、MIP1a (p = 0.02)及びTNFα (p = 0.01)が有意に低値であった。【結論】炎症に関連するサイトカインは健常者群と比べてIBS-D患者群で有意に高値であり、IBS-D患者に限定すると、食物アレルギー陽性IBS-D患者で特に炎症性サイトカインは低値であり、食物アレルギーの病態への関与が示唆された。28基-52: 炎症性腸疾患におけるセリアック病関連抗体価及び抗IgG4抗体価の測定とその臨床的意義に関する研究研究代表者:石井 学(消化管内科学) 炎症性腸疾患(以下IBD)患者において、セリアック病関連抗体の陽性率や、血清IgG4値が高いという報告があるものの、それらがIBDに特異的なバイオマーカーになりうるかは明らかになっていない。そこで、それらを検討することを本研究の目的とした。 当院において、クローン病(以下CD)を含む100例(男性54例、平均年齢54±20.3歳、CD25例、非特異性多発性小腸潰瘍症疑い10例、その他65例)を対象として、セリアック病関連抗体である抗DGP抗体(IgG、IgA)、抗tTG抗体(IgG、IgA)、抗グリアジン抗体(IgG、IgA)をELISA法で測定した。CDにおける抗体陽性率は、DGP IgA 19%・IgG 48%,抗グリアジンIgA 12%・IgG 32%で、DGP IgG陽性率が特に高かったが、抗tTG IgG・IgA抗体陽性例は認めなかった。CDでは、非特異性多発性小腸潰瘍と比較して、有意に陽性率が高かった(56% vs. 0%、p=0.004)。セリアック病関連抗体が陽性であった28例の解析で、抗体価と各種血液検査との相関を検討したところ、グリアジンIgA抗体価は、CRP(r=0.628,p<0.001)と正の相関を、アルブミン(r=-0.639,p<0.001)とヘマトクリット(r=-0.61,p=0.001)と負の相関を認めた。クローン病の約半数はDGP IgG抗体が陽性であったが、非特異性多発性小腸潰瘍症の陽性例はなく、両者の鑑別に有用であった。また、グリアジンIgA抗体価は、抗体陽性者において疾患活動性の指標となる可能性が示唆された。次にCD56例を対象として、血清IgG4値をELISA法で測定したが、全症例中9例(16%)でIgG4は高値を呈していた。症例を集積し、更なる検討が必要である。― 消化器・代謝・腎 ―S36川 崎 医 学 会 誌

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